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東京に出て音楽をやるんだ「サクラクエスト」16話 今は頑固な老人たちも、ロックに叫んでいた

20歳女子の木春由乃。限界集落寸前の田舎、間野山の観光協会に呼ばれて、50年前にバンドをやっていた老人の黒歴史を知る。
アニメ『サクラクエスト』16話。Amazonプライムビデオでは、テレビ放送後すぐに配信されていますのでぜひ。全話見られますよ。

公式HPより、二期のメインビジュアル

●50年前のロックなやつらたち 16話「湖上のアルルカン」
「池干し」が始まった。
ところが観光協会の会長・門田丑松は夜中にこっそり池に入って、溺れてしまう。

50年前、丑松と、商店会会長・織部千登勢、鉄工所のドクは高校生の頃、バンドを組んでいた。
千登勢は自分たちの音楽を知らしめるため、東京に出たいと丑松に言っていた。
しかし丑松は東京には行かず、地元の「みずち祭」に乱入、ギターと神輿を桜池に沈めてしまった。
以降、蛟祭りはなくなり、千登勢との仲も決裂。誰にも知られないように、丑松は池に入って隠そうとしたのだ。

それを知った木春由乃たちは、みずち祭の復活が出来ないかと考え始める。

公式HPより。かっこよすぎる若き日の千登勢さんを演じるのは、「けいおん!」のベース・秋山澪役の日笠陽子。


●50年前のロッカーよ
丑松と千登勢の、言葉にはしなかったそれぞれの50年間の主張と諦念が明らかになった、なんともエモい回でした。

50年前というと1970年前後。ビートルズ直撃の世代。
日本だとフォークとロックが混じって、若者の主張のこもった歌が増えていた時期。
丑松らは「はっぴいえんど」とか「頭脳警察」とかのベクトル寄りかも。

若かりし千登勢は「世界はどんどん新しく生まれ変わってる。なのにわたしたちは、こんな小さなところに取り残されたまんま」と憤る。
それに対し、丑松は「なんでみんな平気なんだよ、古くせえしきたりに縛られてヘラヘラ笑って無駄な時間過ごしてられんだ」と答えている。

これ一見似ているが、真逆だ。
千登勢は「自分たちの成長と活躍」を夢見ているのに対し、丑松の望みは「間野山の人間が変わること」。
「俺は逃げない、逃げて東京になんて行かない、俺は逃げずにここで、この寝ぼけたやつらを、この街を、目覚めさせてやる!」

丑松は、あえて50年間、間野山に残って、町を目覚めさせてやると格闘し続けてきた。
それが実っていないのだから、泣けてくる。

アニメ序盤で「丑松は若者でバカモノだけど、よそ者じゃなかった」という話が出ているのは、ここなんだろう。
逃げなかったからこそ、運良く由乃らの頑張りを見ることができた。
ドヤ顔で腕を組んで、由乃たちの活動を見てきた丑松。表情の裏に、色々な思いがありそうだ。

●凛々子ちゃんフラグ
予想。ラストはイケイケ由乃が間野山に居住して、引きこもり凛々子が海外に出ていくんじゃないか?

今回、凛々子が町から出そうなフラグが、バンバン立っていた。
「クリプティッド12」のルシアと出会ったことは、引きこもりだった彼女の人生において、革命的な出来事。
今まで自分から誰かにコミュニケーションをとることが少なかった彼女が、笑顔で挨拶し、別れる際にハグまでしている。

公式HPより。陽気なラテンのノリと、UMA好きのシンパシーが凛々子とぴったりあって、あっという間に仲良しに

UMAを実際に探している人が、現実に目の前にいる。世界のどこにだって、自分だって行こうと思えば行けるのに気づく。
「いつか一緒に世界を見よう」という彼女のセリフは、凛々子に刺さっていたようだ。

「今何を思っていようが、どんな夢を持っていようが、年を取れば皆忘れて、どうでもよくなっちまうんだ。だから凛々子もそうなる前に、今のうちに、なんだってやっておくがいいさ」
千登勢は、薄々凛々子の心情の変化について、気づいているのだろう。今まで主張の無かった凛々子が、最近は自分の意思を言うようになってきている。

一方で、「町に何か新しいものを興そう」としていた「よそ者」由乃。
視点ががらりと変わって「この町の人に喜んでほしい」「かつてのみずち祭を復活させたい」と、地域に目を向けるようになった。
もう「東京の方が」という自分の思い込みは完全に払拭されている。

任期はあと半年らしいが、うまくやっていると丑松にも認められてきている由乃。
地元に戻るわけでもないのなら、定住してやりたいことすでに山ほどありそう。
「桜池ファミリア計画」とか、100年がかりだからな! 

1クール目の浮足立った雰囲気と違って、2クール目は地に足の着いた話が進んでいる。
……かと思ったら3つのアイテム集め。
ここで、「クエスト」かー。少なくとも今までの流れだと、田舎の観光問題と絡めて話が進んでいるので、どう切り込んでいくかは気になるところ。


「織部凛々子の業務日報」は電子書籍版は今日から配信開始。
2クール目入ってからの凛々子の活躍はほんとめざましい。2クール目の主人公なんじゃないか。

『サクラクエスト』1話 就活失敗女子、限界集落寸前の町で疑問だらけの行動の末、国王になりました
『サクラクエスト』2話 最初の町おこし失敗、サイト作ったくらいでお客さん来たら苦労はしません
『サクラクエスト』3話 町の発展とか正直どうでもいい、住む権利はあるけど、盛り上げる義務はないでしょ
サクラクエスト』4話 由乃国王、サーバルちゃんみたいになる「すごーい!」
『サクラクエスト』5話 バカは立派な褒め言葉、サグラダファミリアみたいな建造物をつくりたい由乃国王
『サクラクエスト』6話 売れたかったら蝉を食え。女優って職業の人は……「変わった人間」なんだなぁー
『サクラクエスト』7話「そんなのふるさと捨てた由乃ちゃんだから言えるんだよ!」
『サクラクエスト』8話 年上キラーしおりちゃんの冷たい微笑みはまじサタン
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