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1年ぶりの超大作『ベルセルク』39巻。デジタル作画になっても凄みのある画力は健在

三浦建太郎の描くダークファンタジー『ベルセルク』が一年ぶりの新刊。こんなに早く続刊が出るなんて嬉しい驚きです。だって、その前の巻は3年以上待ってましたから。

刊行ペースが上がっていたのは、デジタル作画のおかげだと思います。去年の三浦建太郎氏のコメントでも「ここ最近」と語っていました。
原作者・三浦建太郎先生よりコメント到着! -アニメ「ベルセルク」公式サイト-
ツールの進歩が、いつ終わるともしれない超大作の刊行ペースを引き上げてくれたことに感謝せねば。

それにしても、長い長い旅路でした。心が壊れたキャスカを安全な地に送り届けるって決めてから幾星霜。やっと妖精島に到着しました。劇中では数年だと思いますけど、リアルで追っかけていた我々は15年くらい経ってますからね。

デジタル作画になっても、情報密度の高い絵柄が変わってないのも嬉しいです。妖精島に着くやいなや襲ってくるカボチャのカカシの描きこまれた造形。ハロウィン的なコミカルさが、逆に恐れを抱くデザインになっている画力に痺れます。
そうそう。妖精島の老いた魔術師の顔が、元クシャーンの妖術師・ダイバに似ているんです。それだけでダイバが妖精島の出身だと読者に匂わせる、絵の巧みさに唸るばかり。

妖精王のもとに辿り着いたガッツ。キャスカの心を回復させる方法があると知らされた時の嬉しそうな顔ってば。ひたすら怒りを振りまく、復讐の鬼と化していたガッツからは想像もつきません。
長い旅路で、パック、イシドロ、ファルネーゼ、シールケら新たな仲間が加わりました。彼らの影響でガッツが人間らしい感情を取り戻していることが、この一コマに集約されていて、なんとも胸熱なシーンです。

キャスカの心を修復するために、彼女の夢に潜り込むことになったシールケとファルネーゼ。キャスカの深層世界がすさまじい。
黒い太陽が照らす、薄闇(うすくらがり)の荒野。左前足の欠けた黒い犬が、棺桶を引きずっています。その身にはいくつもの槍が刺さったまま。それだけで胸がつまりそうになる、キャスカの夢におけるガッツの姿です。あまりの寂寥感に息をするのも苦しくなる、キャスカの心象風景の数々。
これぞ三浦建太郎の作家性というしかない、凄みのある描写の数々。はたしてキャスカは元通りになるのか。デジタル作画を最大限に活かして、せめてこれからも年刊ペースで出してくれと願わずにはいられない、読み応えのある39巻でした。