2016.03.22
吉本ばななの電子書籍の新刊『ジョンとばななの幸せってなんですか』と一緒に名作『とかげ』を読んでみよう!
こんにちは。アオシマ書店のrisapperです。
3月11日に私が長年ファンである吉本ばななさんの新刊『ジョンとばななの幸せってなんですか』が電子書籍版として発売されましたのでご報告いたします。
『ジョンとばななの幸せってなんですか』では、ノマド作家のジョン・キム氏と吉本ばななさんの二人が自分の波乱な人生を振り返りながら幸せの在り方や自身の考え方について綴った一冊です。
最新刊が電子書籍ですぐ読めるのはありがたいですね、この電子書籍の発売がきっかけで初めてジョン・キム氏の作品を拝見したのですが、面白そうな作品が沢山あったので、彼の作品も読んでみようと思っています。
吉本ばななさんの作品はしたたかに自分らしく生きていく人の強さや優しさを描いた作品が好きで、小学校の頃からファンなのですが、数ある作品の中で『とかげ』は私のお気に入りです。
『とかげ』は6編の短編集からなる作品で、吉本ばななさんの人気作品の一つですが、その中でも「大川端奇譚」という話は当時中学生の私に強い衝撃を与え、心に残っている作品です。
作品の内容は10代の頃に数多くの性体験と快楽を経験した女性が大人になり、結婚を考える男性とめぐりあったことをきっかけに、過去の経験や、自分の生い立ちと向き合っていくというものです。
彼女にとってその過去は恥ずかしいものでも嫌な記憶でもなく、むしろ自分に自信を持つきっかけになっていたのですが、当時の私には快楽に対する素直な姿勢とその経験を通して前向きに生きる姿はとても新鮮に感じました。
なぜなら当時の学校で女の子の間で流行っている本があったのですが、援助交際やいじめを経験している少女が自分の性体験に嫌悪しながらも抜け出せなくて苦しんでいるという内容で、読んでいてこんな悲惨な体験は絶対にしたくないなと思っていました。
しかし「大川端奇譚」の彼女は自分の性の衝動を素直に受け入れ、一通り経験してどの世界にもプロとアマがいてどんな物事も奥深い一面があると悟っているのです。
学校で流行っている本の少女も、そして彼女も10代という設定なのに、こんなにも違う事に驚きました。そして物の書き方やとらえ方によって物の見方は変わってみえるものだと思うようになりました。
吉本ばななさんの作品の主人公は、特異な環境や困難な状況で生きていることが多いのですが、もがいたり苦しむことはぜずにわずかでも希望や喜びを見つけ、大切に育てて活路を見出していきます。そしてその姿は読んでいる側に既成概念とは異なる柔軟な考え方を教えてくれるのです。
この作品は私が思いこんでいる思想や概念に反対方向から光を当てて、物事の多様性を教えてくれました。
『とかげ』の内容はすべて恋愛小説ですが、心理学のように人の心に寄り添う一冊です。
まだ読んだことのない人は、是非いちど読んでみてください。