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傑作の予感『サクラクエスト』2期へ。大成功しないリアルな歯がゆさの中、20代女子5人町おこし奮闘中

アニメ「サクラクエスト」が13話でちょうど折り返し点を迎え、今晩放映の14話からは二期目がスタートする。
Amazonプライムビデオでは、テレビ放送とほぼ同時に配信されている。

テーマは「町おこし」。
20歳女子の木春由乃。東京の就活は全滅。限界集落寸前の田舎、間野山の観光協会に呼ばれて、よくわからない独立王国の王様することに。
途方に暮れる中、間野山にいた同年代の女子たちと5人で町おこし活動を始める……というのが一期の主なストーリー。

公式HPより、二期のメインビジュアル

地方都市が観光に取り組む際に出て来る企画と問題を、細かくネタにしている。
一期で扱われたのは「独立共和国」「ゆるキャラ」「伝統工芸」「和太鼓クラブ」「映画のロケ地」「廃屋処理」「B級グルメ」「農家の後継ぎ」「婚活ツアー」「踊り」「民謡」「記念イベント」「ロックフェス」などなど。
地方在住経験者なら、何かしらひっかかるネタがあるはず。

●基本的に「満点」はない
この作品は、毎回モヤーっとした部分を残して終わるので、見終わってすっきりしない事が多い。
おそらくわざとだろう。

B級グルメのイベントとして「大そうめん博」を開いた時、人は多く集まり大盛況だった。しかしヒロインたちが発案した「よろこぶそうめん」は賞を取れなかった。
映画のロケ地に使用された際、監督の喜ぶ映像が撮れた。しかし監督は嫌われ者で、この土地を全くリスペクトしていないまま。
それぞれ「よかった」のは間違いないのに、「ちょっと残念」が重なって、カタルシス不足気味。

観光という人間相手の仕事で、100%の大成功なんてありえない。
正直、もっとドラマチックな展開が見たい気もする。けれども派手な結末は少なく、基本静かに終わる。
そのはっきりしない所が、生々しい。

Twitterのハッシュタグを見ると「実際あったらこうだよな」「この部分ってまずいんじゃない?」と、現実との比較をするファンが多い。
そこが狙いの一期だったように思える。「じゃあどうすればベストだったのか?」とシミュレートすると、面白さが増す。

●田舎あるある女子たち
オバカで元気いっぱいな暴走列車、木春由乃を含めた5人は、全て20代の女性。

観光協会のおっとりさん、四ノ宮しおり。胸がとても大きい。
間野山で生まれ育ちで、この土地が大好きな彼女。もっと人が来てほしい反面、大きな変化に対しては保守的で、躊躇いがあった。

女優志望の夢破れて帰ってきた緑川真希。バイトマンでガテン系の仕事もモリモリこなす。
どうせ頑張っても意味がない、と破れかぶれになっていて、序盤は皮肉屋だった。

東京からのIターンでやってきた香月早苗。いわゆる意識高い系。
IT関係の仕事をしていて、自信もあるやり手だが、都会に疲れて間野山に。

UMA大好きな引きこもり織部凛々子。アニメも大好きなオタクでコミュ障気味。
複雑な家族環境の中、友達がほとんどいなく、成人してもずっと家にこもっていた。

みんな、田舎あるあるキャラだ。
真希のように、気合を入れて都会に仕事に出たはいいものの、うまく行かず帰ってくる、なんてことはざら。
凛々子のように、町に愛着があるわけではないけれども、なんとなく外に出ずに実家にいる、という成人男女もいるだろう。

●革新と保守
一期を通じてずっと描かれていたのは、革新派の門田丑松と、保守派の織部千登勢の確執。
この老人2人、とにかく仲が悪い。5人はこの2人の喧々諤々に振り回される。

丑松は「人が来ないことにはそもそも町は盛り上がらない」という考え方。どんな手を使ってでも「まずは話題になってほしい」と考えている。
千登勢は「自分たちの町に誇りを持ってほしい」というスタイル。伝統工芸など町の良いものは、町の人が満足する仕方で正しく伝えようとしている。
考え方は異なるものの、実際は2人とも「町のため」という視点だ。

若者5人は、最初は「なんとかしなきゃ」が先立って迷走していた。
一期後半では「町のため」に視線が向いていったことで、町の人の目線で、地に足の着いた仕事ができるようになってきた。その点は丑松も千登勢も認め始めている。
けれどもまだまだ、その思想を結果にできるまでには至っていない。

12話では、チュパカブラ王国の建国記念祭に、テレビ局が大人気ロックバンドを呼んでいた。
13話ではライブ客が押し寄せて、間野山の出店もイベントも大盛況。
しかし、由乃たちが必死に交渉して制作した商店会の割引クーポンは、大量にゴミとして捨てられており、リピーターはつかず、由乃はえらくへこんだ。

っていっても、観光企画の失敗の規模としては、へこむレベルじゃないでしょう? そんな甘くないよね?
二期ではもっと大きな失敗をしてもめげないくらいに、タフに前に進んでほしい。

ストーリーのおおまかな流れを追うにはコミカライズ版がオススメ。
モヤモヤ感を残しているアニメ版の細かい部分をフォローをすることで、読んでいてスッキリする作りになっています。

『サクラクエスト』コミカライズ版は、キャラを濃くしておっぱいマシマシ(アオシマ書店)
なんて素敵なコミカライズ『サクラクエスト』2で人間関係をふわっと緩和して幸せに(アオシマ書店)

『サクラクエスト』1話 就活失敗女子、限界集落寸前の町で疑問だらけの行動の末、国王になりました
『サクラクエスト』2話 最初の町おこし失敗、サイト作ったくらいでお客さん来たら苦労はしません
『サクラクエスト』3話 町の発展とか正直どうでもいい、住む権利はあるけど、盛り上げる義務はないでしょ
サクラクエスト』4話 由乃国王、サーバルちゃんみたいになる「すごーい!」
『サクラクエスト』5話 バカは立派な褒め言葉、サグラダファミリアみたいな建造物をつくりたい由乃国王
『サクラクエスト』6話 売れたかったら蝉を食え。女優って職業の人は……「変わった人間」なんだなぁー
『サクラクエスト』7話「そんなのふるさと捨てた由乃ちゃんだから言えるんだよ!」
『サクラクエスト』8話 年上キラーしおりちゃんの冷たい微笑みはまじサタン
『サクラクエスト』9話 田舎の人間関係の間合いを実感しつつ、水着で流されそうめん女子
『サクラクエスト』10話 オタク「コミュ障気味」女子、田舎の婚活ツアーが無理すぎてほとほと疲れ果てる
『サクラクエスト』11話「私のことなんか誰も認めてくれない」そんな引きこもりUMA女子ががんばった
『サクラクエスト』12話 田舎に人気ロックバンドを呼ぶとかやめてー! 大失敗フラグじゃないの?
『サクラクエスト』13話 待て待て、半年程度で観光客が毎日もりもりくるようになるとか、絶対ないから!