野球場にも食はある。球場グルメ専門マンガ『球場三食』2

梅雨があければ夏本番。プロ野球ファンは球場での観戦が楽しみになる季節だ。

ひいきのチームを応援するのが何より楽しいわけだが、球場の観戦で重要な要素を占めるのが、球場の持つ独特の雰囲気、そして球場の持つ一つの文化とも言えるご当地球場グルメだ。ひいきのチームを持たず、全国の球場をめぐる球場&球場グルメマニアも存在する。

先月、2巻が発売された渡辺保裕『球場三食』は、全国の野球場で実際に販売されている食べ物にスポットをあてたグルメマンガだ。実在のチームも選手も登場するが、野球そのものは背景程度。主役はあくまで球場とグルメだ。グルメマンガの多様化もここまで来た。

1巻では、神宮球場、西武ドーム、マツダスタジアム、東京ドーム、ありし日の藤井寺球場が取り上げられた。2巻で取り上げられたのは、Koboパーク宮城、札幌ドーム、ZOZOマリンスタジアム、ナゴヤドーム&ナゴヤ球場だ。

ポイントは食べ物だけでなく、球場そのものを隅から隅まで味わい尽くしていること。球場の歴史、豆知識、観戦ガイドなど、至れり尽くせりの内容だ。なにせ、今は存在しない藤井寺球場の界隈までルポマンガにしているのだから。

ちなみに2巻で取り上げられたナゴヤドームは球場グルメが貧相だということで有名だが、現在は2軍が使用しているナゴヤ球場(かつてのホームグラウンド)と合せ技1本にして描いているのがニクい。ナゴヤ球場であんかけパスタが食べられるなんて知らなかった!(600円) あと、ナゴヤドームで一番褒められていたのは底が深いロッカーだった。

作者の渡辺によると、『球場三食』はグルメマンガというよりは、球場に野球を観戦に行くことが何より好きな人のライフスタイル(生活)を描くマンガなのだという(1巻巻末のインタビューより)。

何がうまいとか、何がコスパが良いとか、そういうことじゃなくて、球場の雰囲気とともにメシを食べるのは大変楽しい。プロ野球に詳しくなくとも、球場に足を運びたくなる1冊だ。