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2017.06.26

乃木坂46メンバーで映画化予定の薙刀部マンガ『あさひなぐ』23巻、慣れない脇構え

9月には乃木坂46メンバーによる実写映画化も控えている『あさひなぐ』。高校に入学した東島旭は、中学時代は美術部というインドア派で運動苦手な女の子。初心者の旭が薙刀部へ入部して、愚直に努力して強くなっていくスポ根マンガです。22巻から事実上の第二章がスタート。ますます熱気に満ちたドラマが展開されています。

関東大会に出場することになった旭。そこで素朴な雰囲気の選手・河丸摂と仲良くなりました。摂は無名にもかかわらず、旭のライバル・一堂寧々に勝利。寧々を下したことで摂は俄然注目を浴びることに。摂のスタイルは薙刀の切っ先を後ろに構える変則的な「脇構え」。慣れないスタイルに苦戦する旭は、上段の構えで対峙するのでした。

「あさひなぐ」は、マイナー競技である薙刀のルールや解説を分かりやすく伝えることに長けています。
薙刀の切っ先は闘争心の現れ。試合では、切っ先同士で威嚇しながら攻撃へ転じるのが通常の試合運びです。脇構えは、居合斬りのように得物を体の後ろへ隠します。対戦相手は切っ先を後ろに隠されることのやりづらさが発生します。しかし、脇構えの本人は面も胴もがら空き。無防備になってしまいます。
旭が摂のスタイルに苦戦する理由。今まで誰も脇構えを取ってこなかった弱点。それら薙刀の常識が、さらっとキャラの心情や観客のセリフの端々から読み取れるようになっています。

それでも摂が脇構えを取る理由は、喘息持ちで長時間の運動ができないから。剣豪のような太刀筋で勝負を一瞬で決める必要があります。その時の摂のモノローグが痺れます。

「試合場の中でたった5秒間、私は世界で、一番強い人になる。」

そう。『あさひなぐ』の魅力は、モノローグの美しさ。そのモノローグを、迫力ある作画とリンクさせることで強烈な説得力を持たせています。

旭とは友達以上、恋人未満の宮路夏之は、復帰戦として関東大会に望んでいます。一度は逃げた薙刀の道に戻ってきた夏之の心中がモノローグで語られるのです。

「オレは知ってる。怖いのは、試合に負けることじゃない。
自分に、負けること───」

また國陵高校の寒河江純主将は、これが引退試合。寧々の乱した部内の不和を解決できずに苦しんだこともすべて飲みこんで、

「私たちはチームだった。こういうチームだった」

と肯定。決して難しい単語を使わずに、これだけ心に響くモノローグになっています。一人一人が脇役ではなく主人公。掘り下げるバックボーンが深いからこそ、そこに味わいが生まれるのではないでしょうか。

萌える絵柄とは裏腹に熱い試合が繰り広げられるスポ根卓球マンガ。

背すじをピン!と~鹿高競技ダンス部へようこそ~ 1

初心者の主人公が競技ダンスにハマって成長していく姿が旭と似ています。読後の清涼感も一緒。