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身体を見つめられ、描かれる官能『熊西美術部らふすけ先輩』

人間はじっと見つめられるとドキドキするもの。でもそんな機会は恋人同士でもあまりない。
ただし人物画のモデルは、毎日のように身体をじろじろ見られる。

『熊西美術部らふすけ先輩』は、モデルとして見つめられるマゾヒズムを描いたフェティッシュコメディだ。

放課後の美術部の部室。ヤンキーの少女・嵐恵は、毎日のようにモデルをするハメになってしまった。
彼女を描くのは、美術オタクの1年生・江田誠二。彼は黙々と恵を見つめ、一心不乱に鉛筆を動かす。

誠二が自分の首筋を鉛筆で描いている、と意識すると、彼に実際の首筋をそっとなぞられているかのような感覚で、身体が火照ってしまう。身体のゾクゾクして止まらない。

普段元気なヤンキーの先輩が、誠二の視線一つでモデルとして全く動くことが許されなくなる様子は、緊縛プレイを連想させる。
静謐な空気の中で、彼女のふともも、首筋、背中、腹部の肉付きなど、身体の各部に魅入られた誠二が一心不乱に描く。その様子は、谷崎潤一郎の『刺青』のように艶めかしい。本人曰く「先輩フェチ」

後半、美術部の部長・霧島が登場してから、フェチ度はさらにアップ。
霧島は露骨に、見られることに興奮し悦んでしまう変態。
恵は描かれて気持ちよくなっているのを、霧島に見抜かれてしまう。

ダヴィンチがモナリザを描いたように、画家が自分にとって最高のモデルを見つけるのは、恋人を見つけるよりはるかに難しい。
お互いのことだけを考えながら向き合い、静まり返っている美術室は、とてもエロティックだ。