私たち「パチンカス」は、パチンコ屋でストレスをお金出して買っている(知ってる)『ぎゃんぷりん』
押切蓮介のギャンブルコメディ『ぎゃんぷりん』1巻の配信が配信が配信中だ。
いつも4人でつるんでいる女の子たち。
彼女らが並ぶのは、月曜日朝8時の、開店前のパチンコ屋だ。
しかも徹麻帰り。
「何より…この並んでる時の高揚感が好き…」
「そうそう、希望に満ちててテンションMAXよ」
「朝一は好きな台に座れるし、皆一斉に打ち始めるのがたまらないわ」
パチンコ屋開店前は、聖なる時間だ。
もっとも、ほぼ負けるんだけど。
元気いっぱい熱血系のタマコ。ディープなギャンブル中毒ミズホ、おしとやかなお嬢様にして打ち始めると狂人化する沙美、打つ前に様々な願掛けをして挑むオカルト派フジノ。
4人4様の欲と怒りが、パチンコ屋で渦を巻く。彼女たちには自称「パチンカス」のプライドがある、らしい。
どうしようもない奴らの淀んだ情熱を描くのが、押切蓮介はものすごくうまい。
4人のみならず、出て来る人間はクズだらけだ。
デート中なのに一人黙々パチンコを打って彼女に喚き散らす彼氏。
勝てないからとキレて台をガンガン殴り、周りの人のプレイの邪魔をし、あげく顔を殴る老人。
しょーもない人間たちの、ギスギスした空気の中、お店にお金がモリモリ飲み込まれていく。
ミズホ曰く「ストレスをお金で買っている」。
なのに、パチンコ屋の荒んだ空気が、えらい心地よい。全力で遊んでいる彼女たち、心底楽しそうだ。
描いているのは4人の人間関係と、ギャンブラーたちの悲・哀・憎・苦・苛、あと最後に笑い。なのでパチンコをやったことない人でも楽しんで読める。
「辞めた方がいい」なんて、4人ともわかっている。
でも、ダメ人間だということは、「自由人」ということでもある。
「今が一番楽しいのかもな。こうして4人で共通の趣味を共有して……今が一番幸せなのかも」
薄暗い空間に立ち上る熱気を、魅力的に描く手法は『ハイスコアガール』『ピコピコ少年』に通じるものがある。
なお、パチンコ・パチスロの演出には、作者の『ミスミソウ』『焔の目』などが用いられているので、ファンは要チェック。