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「SPA!」創刊29周年「キン肉マン」特集、成長した読者にこそ染みる“大人仕様”の魅力を徹底解剖

いつまで経っても、『キン肉マン』を読んでいる。昔のコミックスを読み返すこともあるが、それと並行して新作の方もチェック。
週刊少年ジャンプで1987年まで連載されていた同作は、2011年より『週プレNEWS』にてwebコミック配信として連載を再開した。「おじさんホイホイ」なる微妙なスラングが存在するが、キン肉マンはそれにとどまらなかった。2013年「このマンガがすごい!」の“オトコ編”で、なんと第7位にランクインしているのだから。あきらかに、現在進行形!

『SPA!』(6月13日号)にて、キン肉マンが特集されている。

SPA! 創刊29周年を記念して「29(ニク)=肉」をテーマに特集を組みたいと考えた編集部によるこの企画。要するに、「SPA!」を発行する扶桑社が『週刊プレイボーイ』を発行する集英社にオファーを出し、会社の垣根を超えて実現した特集である。

■善悪二元論に収まらないアトランティスに見る、大人仕様の『キン肉マン』
とにかく、キン肉マンの歴史は長い。もちろん、長く接している読者ほどに同作を深く楽しむことができる。
というのも現在連載中の同作、思わぬ場面で過去のエピソードを素敵な形で回収しにかかるのだ。これが、どうにも我々の琴線に触れる。その辺を解説した今回の特集記事が熱いので、そのまま引用しよう。

「ロビンマスクとの死闘で強烈なインパクトを残した7人の悪魔超人のひとり、アトランティスと真・完璧超人マーリンマンの試合は新たな名勝負として評判が高い。(中略)キン肉マンに敗れたアトランティスが敗戦後、いかにして弱点を克服するために厳しいトレーニングを積み、再びリングに上がったかというサイドストーリーには、続編の魅力が凝縮されている。バトルだけでなく、アトランティス個人のパーソナリティにもスポットライトを当てることで、ファンは『こいつ、実はこんな性格だったんだ』という新たな一面を四半世紀の時を経て知るのだ。かつては憎たらしい敵役にすぎなかった彼らの内面は善悪二元論には収まらないもので、大人となった我々にはより響くものがある」

■『キン肉マン』には“維持”と“更新”の両輪がある
『キン肉マン』は、たしかに子どもたちに夢と希望を与える作品であった。しかし、現在の読者層の中心部を担うのは間違いなく大人だろう。かつては子どもたちに刺激を与えていたはずのロックミュージックが、今では成長した大人リスナーたちの拠り所となっている状況に酷似している。

強い相手を前に逃げ出してしまいそうになるキン肉マンの姿は、大人の方こそが励まされる。シンパシーを感じるし、糧になる。原作者の嶋田隆司氏は以下のようなコメントを残している。
「最近は主人公が無双する漫画が多いけど、キン肉マンは怖いとおしっこちびって、負けそうになると風呂敷かぶって逃げちゃう。(中略)でも、最強じゃないところが、キン肉マンの良さなんです」

今回の特集で、35~45歳の男性『キン肉マン』ファン200人を対象に「俺たちが選ぶキン肉マン名場面ベスト10」と題したアンケートが実施されている。
では、その内のトップ3を以下に列挙しよう。

1位:アトランティスvsロビンマスク
2位:ラーメンマンvsウォーズマン
3位:テリーマンvs新幹線

いかがだろうか? 率直に言うと、どれもハッピーエンドではない。3位は、優しさゆえの“悲哀”を表現しているし、1位と2位は勝負の残酷さをまざまざと見せつけている。
小学生時代のファンを対象に同内容のアンケートを実施したならば、今回と同様の結果になるとは思えない。世間の厳しさに晒された読者らの経験が、このランキングには如実に表れている。

『キン肉マン』は、どの時期、どの年代で読んでも新鮮な発見があるということ。加えて、新ストーリーは現在進行系で展開され続ける。耐性を維持しながら更新していく作品なのだ。
「もう『キン肉マン』は僕らだけのものじゃないんだと痛感しました。読者が求めてくれる限りは『キン肉マン』を続けていくつもりです」(嶋田氏)