「あたしなんて全然SF詳しくないですから!」SFファンあるある『すこしふしぎな小松さん』
『すこしふしぎな小松さん』はSF好きのコミュニケーションを描いた作品だ。
小松さんはいつもSF文庫を読み続けている女子高生。
クラスメイトの宮内くんが彼女に話しかける。
「小松さんて「SF」に詳しいんだ」
「あたしなんて全然SF詳しくないですから! まだ千冊も読んでないあたしなんてまだまだ……大体原文も読んだことないですし、カードの「エンダー」サーガも途中までだし、イーガンなんか難しくて何度も挫折して(以下略」
ぶっちゃけ小松さんが何を言っているのか、宮内くんには全然わからない(SFファンなら細かいネタにニヤニヤすると思う)。
でも楽しそうで仕方ないから、宮内くんは小松さんが気になる。
描かれているSF好きたちの会話は、とにかくめんどうくさい。
小松さんと宮内くんが行った、大学のSF研究会のやりとりは特に顕著。
「そこなる少女よ……キミはハインラインなら何が好きかね?」
「もちろん「夏への扉」です」
「ハインラインは「月は無慈悲な夜の女王」だろう!」
め、めんどうくさい。
しかし小松さんは、この大学に進学したい、と考える。気に入ったのだ。
ちょっとわかる。
このマンガは宮内くん以外は、SFが好きでしょうがない人間ばかり。
楽しいものを共有したい、という気持ちが全員、めちゃくちゃ強い。
その割に、ちょっと話し合うと「〜〜はどうかと思う」「〜〜は読んだ?」。外側から見るとケンカのようで落ち着かない。
彼女たちの論戦は野球の試合のようなもの。一戦交えると一気に仲良くなる。勝ち負けとかはどうやらないっぽい。
作中では東浩紀の言葉などを引用し、SFの作家・ファンが一体となる独自のコミュニティがあることを描く。
「これはもうSFにしかない世界なんだ!」「ただし売れません! SFだからな!」
小松さんは古書店で、SFマガジンの既刊がずらりと並んでいるのを見た。
それは、結婚したか亡くなったか、身辺整理でSF仲間が一人消えたという事実だ。
SFファンを増やすにはどうすればいいのか。内にこもっていた小松さんは、自分から一歩踏み出す決意をする。
その他日本SF大会の様子や、早川書房のSF編集者のコラムなども掲載。
アニメ化もされた『バーナード嬢曰く。』の神林さんは、SFオタクの人気キャラクター。
SFの話になると超饒舌になり、余計なことまで言ってしまい、こだわりはとことん譲らない。
小松さんと是非対決させてみたい。きっと最初は同時に「私なんかが」って言う。