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脳梗塞で一番効いたリハビリはメールの返信だった『33歳漫画家志望が脳梗塞になった話』

「脳梗塞です。すぐ入院してください。脳血管の一部に血の塊ができて左半身がマヒしています」
急に左腕が重くなり、よろけたり、指が曲がらなくなり、会社に着く頃には紙すらつかめない状態に。
早退して病院へ行くと、「外来受付は終了しました」と言われる。
別のクリニックにいって、「なんで救急車呼ばなかったの」と怒られて、入院である。
『33歳漫画家志望が脳梗塞になった話』は、33歳の著者が、脳梗塞になって、入院し、リハビリから現在までを描いたマンガだ。

ぼくの父親も脳梗塞で倒れた。
母が病院に連れて行って、「様子をみましょう」とか言われて帰され、様子をみてる場合じゃないと他の病院に行って、緊急入院になった。
脳梗塞は、発症してからどれぐらい時間が経っているかで処置の仕方が大きく変わる。
にも、かかわらず、そのための受け入れ態勢は万全とはいいがたい。
父のリハビリの様子も少し見ているので、しじゅう共感しながら読んだ。

脳梗塞で倒れた著者は擬パンダ化されて描かれ、ブンブンと激しく動き、しじゅうツッコまれたりツッコんだりしている。
読んでるこちらも、心の中で「いやいや、それどころじゃないでしょ!」とか思わずツッコんでしまう。
そういったトーンもあるし、33歳という若さもあって、病気エッセーマンガであるにもかかわらず全体が明るい。
“楽しく読んで、勉強になって、そして自身の健康を振り返るきっかけになればいいな”と、あとがきにあるように、ポジティブだ。
さまざまなリハビリが描かれるが、一番効いたリハビリは、メールの返信。
自宅に帰ってから「メールを返すため半ばムリヤリ指を動かした」ことだったというエピソードが印象に残る。

とはいえ、退院してめでたしめでたしではなくて、退院した後の不安も(「消灯すると必ず左手に違和感がでる」)描かれていて、病気によって人の生き方が変わることを考えさせられる。
職を辞めて(?)、マンガをガッツリ描き出すという大きな変化もあるし。
エピソード間に、姉の視点から同じ時を描いた「妹が脳梗塞になった話」が挟まれてるのもいい。