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羅川真里茂&木原音瀬『吸血鬼と愉快な仲間たち』男たちの真情にひりひりする

木原音瀬の原作小説を「ましろのおと」「赤ちゃんと僕」の羅川真里茂がコミカライズした、「吸血鬼と愉快な仲間たち」(『別冊花とゆめ』/白泉社で連載中)。


もとは人間だったが、昼はコウモリ・夜は人の姿へと変身する吸血鬼のアルベルト・アーヴィング(通称アル)は、エンバーマーである高塚暁と出会い、一緒に暮らしている。
エンバーマーとは、遺体の破損を修復したり化粧を施したりするエンバーミングを行う人のことだ。

最新刊の2巻。
とある事件をきっかけに、アルは暁の友人・忽滑谷(ぬかりや)刑事の手伝いをすることになる。

アル 警察の捜査に協力してくれないか?

人の役に…立つ…?
僕が?
こんな体になってから 邪魔者扱いしかされなかったけど

人から必要とされ、力を貸す。
役に立つ、感謝される。
コウモリの姿を、暁の同僚たちから可愛がられる。

吸血鬼となり、
現代の社会でうまく生活できないでいたアルは、人らしく生きていることに気づく。
そして、

僕は暁の為に 何かをしたい!!

不器用な 暁が愛しい

暁にほめられたい、もっと仲良くなりたいという他者を求める感情が
アルの中に戻ってくるのだ。

アルは、吸血鬼として不完全体だった。
一度死んでしまった身であることから、もとの人間関係は失われ
改めて死ぬこともできない。
動物の血で飢えを満たし、孤独だった日々の痛さは1巻で描かれている。

俺らにお前の面倒を見ろとでも?
冗談じゃない

貧乏には
慣れるのではなく 慣らされていくんだ

他人との関わり合いを避ける暁と、
すべてを諦め、時間だけが過ぎ去る毎日を過ごしていたアル。

個の成人男性である2人は、考えをぶつけ合うことが多い。
ケガを負ったり、エンバーミングを行ったりのシーンでは血が流れる。
痛い、ひりひりする。

でも、その代償としてアルと暁は、お互いを知っていく。
相手のためならばと、
自分の体を傷つける判断を無意識でしてしまうくらい、関係が深まる。
理解をしあうことに、種族や性別は壁にならない。

アルは、暁から敬う心や優しさを感じ取る。
だから「この人の傍にいたい」と考えるのも、自然なことのだ。