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私のことを殺してください(最高に美しくね!)『君死にたもうことなかれというなかれ』

最高の死を探すコメディ『君死にたもうことなかれというなかれ』の配信が始まった。「なかれ」は二回。

山野螢は絵画「オフィーリア」に幼い頃出会って、激しく魅了された。
「死って綺麗なんだ」「私も彼女の様に死にたい!」
彼女は美しく死ぬため、身体を鍛え、学問を極め、スーパー女子高生になった。

最高の死を目指すため、プロフェッショナルである殺し屋に依頼。
ところが殺し屋の少女スピカは、彼女の美学が一切わからない。
螢にバカにされたことに腹をたて、意地でも殺したくなった女の子スピカ。
死の美しさが理解できていないスピカを、足蹴にする螢。

スピカは彼女に、殺害計画プランを山ほど持っていく。でも全ボツ。美学にそぐわないんだってさ。
2人は「死ぬプラン」で、あーでもないこーでもないとやり取りを繰り返す。
なんだか楽しそうだ。

螢はきれいに死ぬため、日々健康に気を使っているいる。普段はモデル業もしている。
「いつ死んでもいいように、常に美意識を忘れない。モデルの仕事はその助けになる。わかったかしら」

螢の「死」の考え方自体は、誰にも受け入れられない。いわばマイノリティな思想だ。
それを初めてさらけ出して話し合える友人(?)になったのがスピカ。
人生で一度しか無いできごとのためにプランを立てる2人に、悲壮感はかけらもない。
これは話し会える仲間に出会えた幸せを描く、ガール・ミーツ・ガール作品だ。

殺し屋の友人の話として有名なのは「キルミーベイベー」。
一応ヒロインやすなが、殺し屋ソーニャを止めたいという流れではあるが、途中からそのへんはどうでも良くなっている。
ただスラップスティックなギャグの裏で、ソーニャが確実に人を殺し、一方でやすなとの日々を大切にしている、というのが見え隠れすることに気付かされる、毒のある作品。