ADHDと統合失調症は別物です『史群アル仙のメンタルチップス』メンタルの誤診はやめて
『史群アル仙のメンタルチップス 〜不安障害とADHDの歩き方〜』が発売になった。
ADHD(注意欠陥・多動性障害)の作者が、生きることもままならない日々を経て、Twitterで話題になり、マンガ家として踏み出すまでを描いたエッセイコミック。
作者は幼い時から集中力がなく、落ち着きがなくよく動き、思ったことをすぐに口に出してしまって顰蹙を買いがちだった。かと思えば過集中で、好きなことに没頭すると、文字通り寝食を忘れて延々と続けてしまう。話し出すと止まらなくなってしまい、空気を読むのが苦手で、人とうまくコミュニケーションが取れない。
大人になって苦しんでいたところ、作者の力を認め、ちゃんと叱ってくれるアーティスト・菩須彦に出会い、弟子入り。ADHDとの折り合いのつけかたを考え始めていく。
二次障害による誤診で起きた出来事が、強烈だ。
ADHDの場合、社会になじめなかったりいじめられることがある。
これが原因で、鬱病やアルコール中毒などの疾患にかかることが少なくないそうだ。
はじめて行ったメンタルクリニックでは、この二次障害部分だけで診断され「躁鬱」で「統合失調症」だと薬を出される(この時点でめちゃくちゃだ)。
ナゾの点滴を打たれ、ナゾの薬を渡された作者。
帰りの道で意識が朦朧として道に倒れ、失禁をしてしまう。
その後も薬は増え、点滴は続く。
バイト先では薬の副作用でまともに仕事ができない。家ではよだれが垂れ、もらしても何もできない。
薬を飲み忘れると、フラフラして吐いてしまう。
頭がはっきりせず、夢遊病的に町を徘徊するように。「私は人を殺すかもしれませんっ」と警察で壁に頭を打ち付ける。
「犯罪者になればかつての友人が心配して会いに来てくれるのでは」と包丁を持ち出したこともある。
そして、首吊り自殺未遂。
ずっと薬でラリっている状態だったのだ。
誤診の薬を飲み続けで、もし自殺できてしまっていたら、責任の所在はどうなるのだろう?
正しい診察を受けてADHDとわかった時、はじめて自分の苦しみの正体に気づいた作者の顔は、とてもすっきり描かれている。