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新連載『放課後ウィザード倶楽部』について架神恭介先生に話を聞いてきた。

こんにちは。アオシマ書店の店員2号、八田モンキーです。

このたび、架神恭介先生が原作を担当されている漫画『放課後ウィザード倶楽部』の連載が週刊少年チャンピオンにて開始されるとのことで、作品のお話を原作者ご本人に聞いてきました。

作品情報

タイトル : 『放課後ウィザード倶楽部』
原作 : 架神恭介
漫画 : 渡辺義彦
公式サイト : 週刊少年チャンピオン 2016年No.16

ことの始まりは2年前ーー。
須加那由多(すがなゆた)は、気付くと自室の寝床の中にいた。見慣れた光景だがどこか感じる違和感…。
導かれるように自室の扉を開けた先にはーー、青く輝く空と緑の草原が広がっていた。
「あ、これは明晰夢か…。」
その世界に存在する謎の遺跡、モンスター、マジックアイテム!?
夢だけど、どこかリアルな世界の謎を探るべく、親友・穴屋ニトリ、平崎三太(サンチョ)の3人でダンジョンへと潜り込む!

作品の概要について

八田 : どんな作品なのか教えてください。

架神 : 寝ると夢の中が異世界ファンタジーっぽくて、ほかで寝てる同級生も同じ世界にいて、同じ夢の世界で一緒に冒険ができるっていう、夢あふれるファンタジーです。

八田 : バトルありの冒険あり、ですね。恋愛とかも出てくるんでしょうか?

架神 : 出ます。大事な要素として。ただ僕は恋愛を書くのが苦手なんで。でも頑張りますよ。

八田 : 敵キャラは基本的に物理攻撃というか、いわゆる動物的に人間を襲うっていう感じなんでしょうか?

架神 : まあ物理がやっぱり多いですけど、ファンタジー世界の敵がやってきそうなことは結構やってきますね。毒とか。モンスターは動物的な感じで、人語を解さない感じです。その代わりというか、人間同士での戦いとかもあるでしょうね。同じ夢を見ている人たち同士の、とか。

八田 : 動画でもおっしゃってましたけど、「Wizardry」がすごくお好きで、その世界観を物語にしたいっていう着想が、かなり前からあったと。

架神 : そうですね。ゲームを作品化するのが好きなんで。子供のころって、親がゲームさせてくんないじゃないですか。「1日2時間までよ」とか。それ以外の時間を、ゲームの攻略本読んだり、ゲームのノベライズを読んだりしてずっと過ごしてたんで、ゲームっぽい小説とか読むの大好きなんですよ。今はそんなに読めてないんですけど。

八田 : 今回の作品で「Wizardry」と共通する要素はありますか?

架神 : ハックアンドスラッシュ要素があります。ダンジョンに潜って敵を殴ってマジックアイテムを持ち帰るんです。それと、「Wizardry」とはちょっと違いますが、オープンワールドなところもあります。オープンワールドっていうと『Skyrim』とかああいうやつです。広大な空間が広がってて、なんとなくまだ行ってないとこ歩いてたら、「ああ~こんなところにダンジョンがある!」みたいな。そういう感覚を出して行きたいですね。地球上には未開の場所とか大発見とかもうあんまりないですけど、夢の世界にはそういうのがたくさんある感じです。
一方でMMORPG的な方向性もありまして、MMORPGって、基本的には、敵を殴って、ダンジョンを攻略して、って感じなんですけど、人間対人間の交流がありますんで、まあいろいろできるわけですよ。新しい商売を考えたりとか。システムを利用して、まったく別の遊びを生み出してみたりとか。実際、僕はプレイヤーとして観光ガイドとかやってましたし。レベルの低いダンジョンにツアー客を募って、みんなで一緒に歩きながら場所場所を解説したり。

八田 : それって、何かもらえたりするんでしょうか? (笑)

架神 : ツアー客から、観光料金をもらってましたね。ちょっとした寸劇を入れたりとかもしてました。僕はモヒカンザコのユニオン(ギルドみたいなもの)をやってたんですけど、その観光ツアーの最中に、モヒカンのひとりが「アニキ〜! 大変だ〜! ◯◯が来やがった〜!」みたいな感じで現れて、「俺たちがツアー客を守る〜!」とか言って前に行って、「みんな今のうちに逃げるんだ〜!」みたいな感じとか

八田 : めちゃ楽しそうですね(笑)。今回の連載のなかで、そういう展開もありえるってことでしょうか?

架神 : まあそれはやるかどうかわかりませんけど。ようするに、いろいろ自由度があるんですよ。行けば何かあるし、アイデアが思いつけばなんかできるし、みたいなそういう自由度。逆に、自由でなんでもできるから、オープンワールドとか何をすればいいのか分かんなくなったりもしますよね。それでもゲームは一応シナリオがあるんですけど、こっちは本当に何もない。何もないなかで何をするか、何をしたいか、みたいな。

八田 : 今回も『ダンゲロス』みたいに、それぞれのキャラクターが異能力を使うんでしょうか?

架神 : いや、だいぶ違いますね。所持しているマジックアイテムと、あと魔法です。

八田 : じゃあ、わりとアイテムゲーになるわけですね。

架神 : アイテムがやっぱりでかいですね。ただ、「じゃあこいつアイテムなくなったら弱いのか」って話になるじゃないですか。そうならないように努力はしてます。アイテムは強いしそれを使うやつも強い、っていうように描けるよう頑張ってます。

八田 : 主人公にもユニークスキルはないんでしょうか?

架神 : 言ってしまうと、主人公にはあります。どんな能力かは、1話のなかにもヒントがありますよ。

小説と漫画を同時連載

八田 : 小説と漫画を同時連載ということですが、どういういきさつでそうなったんでしょうか?

架神 : 原作を小説で書いてるんで、当然、小説が手元にあるわけじゃないですか。で、編集さんに「これ電子で勝手に出していいッスか?」って言ったら、「いや、ちょっと待って」ってことで、エブリスタで公開することになりました。 まあ、企業対企業で連動してくれることになったので、こっちのが良い展開ですね。

八田 : 同時連載は世界初とのことですよね。

架神 : いや、僕自身は正確には知らないです。でも聞いたことはないですよ僕は。どうなんですかね? もしかしたら正確にははじめてじゃないかもしれないけど、少なくともチャンピオンでは初めてなので、「(秋田書店では)世界初」ってことで(笑)。

八田 : 担当編集さんや架神さんとしては、同時連載にどんな狙いがあるんでしょうか?

架神 : いやだから、せっかく小説もあるんだから、なんかしようでこうなっただけですよ(笑)。それはそれでひとつの作品なんで、っていう感じですね。ただ、漫画と小説が同時公開ということで、その違いを見比べるのは制作過程が垣間見えて興味深いかもですね。けど、マニアックな楽しみ方になっちゃうので、そこは動画の解説で橋渡しできれば…と。

八田 : 動画では、今回の原作は色々と苦労があったとおっしゃっていましたが。そのあたりをお聞かせください。そもそも、漫画原作のお仕事とはどういったものなんでしょうか。

架神 : 原作用の小説執筆と、それをもとにしたネームのチェックですね。まあそれは当たり前なんですけど、やっぱ小説と漫画って違うんですよ。具体的に言うと、週刊漫画は1話1話を盛り上げていかなきゃいけないんですけど、小説は1話で盛り上げるんですよね。小説の1話って、漫画の5話ぐらいなんですよ。なので、小説1話の中で「起承転結」をやると、漫画だと「起」だけで終わっちゃうんですよね。これをね、最初はわかってなかったんですよ。1話単位でちゃんと少年漫画として成り立つように、さらに組み立て直さなきゃいけないっていう。この修正作業はけっこう大変でしたね。

八田 : 「起承転結」の「起」のなかに、さらに「起承転結」があるというイメージですね。でもそれだと、小説と連載のペースを合わせていくのは難しいのでは? 今回は初回なのでページ数があると思うんですけど、次回から少なくなりますよね。

架神 : えっとですね、ぶった切ります。どうアップするかけっこう悩んだんですけど、最終的にはぶった切ろうって話になってますね。その週の漫画の部分だけ、小説部分をぶった切って掲載します。なので、アクション多めの週とかは、小説も400字くらいしかアップされないかも…。

八田 : ちなみに、漫画のネームに合わせて原作も修正をされているんでしょうか?

架神 : 若干してますけど、大きくはしてないです。別物として楽しんでもらえるかなって感じなんで。

「異世界転生モノ」について

八田 : 今回の作品は、いわゆる「異世界転生モノ」とも言えると思うんですが、すでにその分野に色々と作品があるなかで、「この作品はここが違う!」というポイントを教えてください。

架神 : 僕はいわゆる異世界転生モノをよく知らないんですけど、一般的に、異世界と現実世界って、簡単に行き来できるものなんですか? ちなみにこの作品では、気楽に帰ってこれます。毎日帰ってこれます。

八田 : それは何かのヒントなんでしょうか? 「帰ってこれる」というのは。

架神 : 見どころというか押しどころというか違うところですよね。ヒントという意味では、「帰ってこれる」ということで、「現実世界から異世界へのアプローチがある」とだけ。

八田 : 異世界転生といえば、ライトノベルの文脈だと、いわゆる「俺TUEEEEE」が重要な要素と言われていますよね。そういった要素もあるんでしょうか?

架神 : うーん。「俺TUEEEEE」なのかな? 少なくとも最初は強くないです。さっきも言いましたが、主人公の那由多くんにはユニークスキルがあるんで、強い要素もありますよね。そもそも、最近のメディアに全然触れてないんで、そういうのよくわかんないんですよね。この作品を企画した頃にたしか、講談社の担当編集に企画の内容を言ったら、「ソードアート・オンラインって小説があって」って言われたんですよ。それではじめて知ったくらいですから。

八田 : 正直なところ、異世界転生モノってお聞きして、これもライトノベルの文脈に限ってかもしれませんが、いわゆる「萌系なのかな?」と思って驚きました。

架神 : 異世界転生モノって萌系なんですか!?

八田 : 『小説家になろう』で人気の作品とか、異世界転生モノっていったら、すべてではありませんが、多くがハーレム展開という印象です。

架神 : いやいやいやいや、むさ苦しい男ばっか出てきますね。僕では書けないですよ。書けるもんなら書きたいですけどね。女の子、あんまりなあ、書けないからな。ただ、主人公が本当に頼りになるやつになれば、自然と周囲から好感を集めるはずなんで、その結果ハーレムというか、好きになってくれる異性は複数いる、って状況にはなるかもしれないですね。

架神恭介と「少年誌」

八田 : では架神さんのファンを代表してストレートにお聞きします。ずばり、下ネタとか出てくるんですか? 宇宙一のビッチは出てくるんですか?

架神 : 出てこないですけど。ま、出てきますけど。

八田 : 出てくるんですか。

架神 : 出るような、出ないような…うーん。

八田 : 1話を読ませていただきましたが、下ネタではないですけど、ハイカキンっていう世界のネーミングとかは、架神さんらしいなっていう感じがしました。

架神 : 正確には、ハイカキンは世界の名前じゃなくて、そこにいる人たちの名前なんですけどね。バベル世界のなかのハイカキンたち、って意味なんですよ。だから1話のラストはほんとは「バベル世界へようこそ」が正確なんでしょうけど、ハイカキンって言いたくて。

八田 : で、結局、ちんこだの精子だのっていうのは出てこないんでしょうか?

架神 : そこまでは出てこないです。少年誌だし。

八田 : やっぱりそこは、編集さんからある程度のボーダーは引かれてる感じなんでしょうか? ここまではOKみたいなのがあるんでしょうか?

架神 : いや待ってください。なんかあの、僕のこと、ほっとけば常にちんこや精子を書く男だと思ってませんか?

八田 : いや思ってますよ。たぶんファンの方々も。

架神 : いやいやいや、一応、少年誌らしいものも書けるんですよ。

八田 : え、それでは、無理をして「出したいのに出してない」っていう訳ではないってことなんですね。

架神 : うん。無理して抑えたら僕、すぐに嫌になるんですけど、今回は嫌になってないです。なんて言えばいいのかな。鬱屈してないっていうか、抑えてない。エロ方面以外でいろいろはっちゃけてるし。というか実際のところ、これ記事に書かないでほしいんですけど、主人公が途中で◯◯◯◯◯◯◯を◯◯◯するんですよ。そういう感じです。

八田 : え、大丈夫ですか? 今の世界観で◯◯◯◯◯◯◯が出てくる感じまったくなかったですけど。

架神 : まあただ、主人公たちは◯◯がわからないんで、◯◯◯◯◯◯って呼んでますけど。

八田 : そういうネタの場面もあるってことですよね? その後ずっと◯◯◯◯◯◯◯が主人公の◯◯◯◯◯ってわけではないですよね?

架神 : いやずっと◯◯◯◯◯ですよ。◯◯◯◯◯◯◯を◯◯◯る主人公ですよ。まあつまり、そういう要素もあるんで、大丈夫なんですよ。スピリッツは失ってない、みたいな感じですね。決して、無理をしているわけではない。

八田 : いやあ、いいお話が聞けましたね。俄然、続きを読みたくなりました。ということは、少年誌だからということで、気をつけていることはとくにないと。

架神 : 「◯◯◯◯は書けない」とかは編集に言われましたね。

八田 : それはそうでしょうけど。

架神 : 「◯◯を掘るのもダメ」とも言われましたね。

八田 : いやあダメでしょうね。そういうネガティブに気をつけてるとこじゃなくて、ポジティブに気をつけているところは…。

架神 : あ、なるほど。そうですね、やっぱり主人公をなんとか活躍させようと頑張ってますね。僕、すぐ群像劇書いちゃうんで。主人公を立てていかなきゃいけないなっていう。それは編集さんが色々と指摘してくれて、意識はだいぶ生まれました。少年誌のなかには、主人公を立てることに特化して人気が出ている作品もあるくらいで、そういう部分はすごい見習わなきゃなって思ってます。実際、やっぱり少年たちはそれを求めてるんだろうなって思うし。
ただ、あんまり僕の性格的に、主人公がそんなに好きじゃないんですよね。好きじゃないっていうか、脇キャラのほうが好きになっちゃって。主人公って、戦うとだいたい勝っちゃうじゃないですか。それがわかってるんで、あんまり興味持てないんですよね。ただ、今回の漫画では主人公が死んだら終わりっていう世界観じゃないので、逆に、主人公はけっこう苦境に陥ったりしますけど。

八田 : まあ、主人公の那由多くん、1話の序盤ですでにアレですもんね。

最後に

八田 : 1話の冒頭って、回想から始まるじゃないですか。あそこに至るのが当面のシナリオなのかなって思ったんですけど。

架神 : そうですね。とりあえずは、あそこに至るまでの流れを追っていきます。

八田 : 最後にひとこと、言い忘れたことなどはありませんか?

架神 : なんかある気がしますけどね。1話の段階だからなあ。難しいですね。どこまで話して良いものか。まあ、サンチョはすごいやつだってことかな。

八田 : 最後の最後にもう少し詳しく。

架神 : 彼はあの世界自体にすごく関心を持ってる。あの世界で何かを探すとか魔王を倒すとかじゃなくて、あの世界がなんなのかっていうのに彼はすごく関心を持ってて、そして彼はお金持ちである。

八田 : なるほど、今後の展開に深く関わってきそうですね。では、サンチョはすごいやつだ、で結んでおきましょう。

架神 : 正直、あいつが書いてて一番手に余ります。それでは、『放課後ウィザード倶楽部』をよろしく!

作家プロフィール

架神恭介
広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。
Webサイト「完全パンクマニュアル」の書籍化により作家デビュー。
自ら構築したテーブルトークRPG、「戦闘破壊学園ダンゲロス」の小説を執筆し、講談社BOX新人賞”Powers”Talents賞受賞、月刊ヤングマガジンにてコミカライズされる。(漫画:横田卓馬)
他書に「よいこの君主論」(ちくま書房)
「飛行迷宮学園ダンゲロス―『蠍座の名探偵』―」(講談社/双葉社)
「ダンゲロス1969」(Amazon)など。

渡辺義彦
千葉県出身。
週刊少年チャンピオン第72回新人まんが賞にて「アフロボマー」で入選受賞。
週刊少年2012年34号より「バーサスアース」連載開始。全9巻。

関連リンク

・週刊少年チャンピオン公式サイト
URL : 週刊少年チャンピオン 2016年No.16

・E★エブリスタ(原作小説を連載)
URL : 少年チャンピオンで連載中「放課後ウィザード倶楽部」の原作小説が、エブリスタにて連載スタート!毎週木曜更新!!
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・架神恭介が作品の見どころを毎週動画で紹介!(全10回予定)
URL : 放課後ウィザード通信(第一回)

『放課後ウィザード倶楽部』は、本日3/17発売の週刊少年チャンピオンで連載開始です!!


放課後ウィザード倶楽部 1【試し読み増量版】