『アリスと蔵六』8巻、アニメで家族になったばっかりなのに、崩れ始めたぞ
現在アニメ放送中の『アリスと蔵六』の原作8巻が発売された。
想像したものを自由に形にできてしまう、謎の少女・紗名。彼女を叱り、げんこつを飛ばす老人・蔵六。
放送分のアニメ6話では、蔵六が彼女を受け入れ、自分の家の養子として招くところまで描かれた。
はじめて家族ができて喜ぶ紗名の姿が、あったかい回だった。
「なあ蔵六、お、おじいちゃんって言ってもいいか?」
発売された8巻も、いい話になりそうだった。
いやいや、今まででトップクラスにきつい展開。ちょっと絵には描けないシーンも出てきた。
8巻では2つの事件が起きている。
ひとつは、紗名の家出。
紗名が「言って悪いこと」に触れてしまい、蔵六にゲンコツではなくビンタをされた。
冷静で大人びた蔵六がキレた「言って悪いこと」は、ものすごく難しい話題だ。
表紙をめくってすぐの、成長した紗名と思われるキャラのカラーページがそれに呼応している。
ここでは書けないが、見たらこの先の話が不安になると思う。
もう一つは、特殊能力ではなく、計算で物理干渉をする一般的な少女、ノエミ・カノヴァスの登場。
言うなれば、魔法の世界に、機械を使う人間が現れたような、大きな変化だ。今後大きく物語を動かしそう。
8巻の中で、時間は1日もたっていない。
時系列はかなりシャッフルされ、多視点でこの2つの出来事を描いているからだ。
また序盤で、若い時の蔵六がほんのちょっとだけ登場する。これが何なのか、現時点ではわからない。
物語のパズルのピースがあちこちにばらまかれているので、読み直した時に発見がたくさん出てくる。
「人間」とはなんだろう、という哲学的問いに向き合うこのマンガ。
しかし本筋は「子どもの成長」「家族の愛情」という軸から一切離れていない。
紗名が自然に蔵六を「おじいちゃん」と呼べる時は、きっと来るはず。