コミック版『みをつくし料理帖』ドラマ化記念で今なら無料

黒木華主演、藤本有紀脚本のNHK土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』がスタートした。江戸を舞台に、天涯孤独の少女・澪が料理の腕一本で自分の生きる道を切り拓いていく人情時代劇だ。

黒木をはじめ、森山未來、永山絢人、小日向文世、安田成美ら実力派のキャストが揃った上、『ちかえもん』で向田邦子賞を獲った藤本の脚本ということで、ドラマフリークから注目を集めるこの作品。ドラマ化記念ということで、岡田理知によるコミック版の1巻が無料で配信されている。

高田郁による原作1巻の「狐のご祝儀」と「八朔の雪」の2編が収録されているが、原作を大幅に再構成したドラマ版と異なり、コミック版は原作にとことん忠実。ストーリーもセリフもほとんどそのままだ。

下がり眉で努力家の澪、ニヒルで一刻者(いっこもん)の小松原、人情家の種市、実直な源斎などが、原作のイメージ通りに登場する。

「ひとというのは 口に出さんでも それぞれに背負てるもんがある
せやからこそ ひととひと 
お互いに寄り添うて 慰め合うて 生きてくんやろうなあ……」

という、ご寮さん(女将さんのこと)の泣けるセリフもそのまま生かされている。澪もご寮さんも種市も、みんな心から大切にしていたものをなくしてしまった人たち。そんな人たちが寄り集まって、未来に向かって歩を進める物語なのだ。

なお、巻末には原作者・高田郁による特別エッセイ「みをつくし打ち明け噺」がついている。

「捕物も同心も斬り合いも書きたくないんです。出来れば、料理でひとを幸せにする話を書かせてください」

これは高田が原稿を依頼に来た編集者に告げた言葉。時代小説といえば剣豪ものか捕物が定番の売れ筋だが、高田のお願いに編集者はすぐさまGOサインを出したという。このとき、高田はまだ小説を1冊出したきりの新人作家だったが、編集者の英断でシリーズ累計300万部のベストセラーが生まれたというのだからすごい。