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東京03やパンクブーブーがお手本「公募ガイド」にお笑いの技法を小説に活かす特集

現在放送中のドラマ『リバース』(TBS系列)。原作者の湊かなえは『公募ガイド』の読者だったという。
文学賞の公募が数多く掲載されている『公募ガイド』では、小説やエッセイの書き方についての特集が組まれることが多い。

『公募ガイド 2017年6月号』で特集に据えられたのは「笑い」だ。「笑いを知れば、小説はもっと上手くなる」と題し、振りやオチなどの笑いの技法を小説に活かそうという内容になっている。お笑いの「基礎の基礎」を学べるレクチャーが載っているのだ。

特集の冒頭では、百田尚樹、藤井青銅(放送作家)、滝沢秀一(マシンガンズ)の三人がインタビューに答えている。

藤井青銅は『ウッチャンナンチャンのオールナイトニッポン』『伊集院光のOh!デカナイト』など数多くのラジオ番組を手がけ、現在は『オードリーのオールナイトニッポン』を担当しているベテラン構成作家。作家になったきっかけが『第1回 星新一のショートショート・コンテスト』入選ということもあり、活字・ラジオ双方の笑いに明るい。

藤井はインタビューで「よく『説明ゼリフは書くな』と言いますが、あれは大間違い」と語る。

藤井「ラジオでは言葉ですべて説明しないと伝わりません。小説でもそれは同じです(中略)自分の中で見えている光景をきちんと説明できてないがゆえに、面白さが伝わらないことがよくあります」

ドラマや舞台では目に見える形で光景を表現できるが、ラジオや小説で使えるのは言葉しかない。藤井の著書『ラジオにもほどがある』には、デビュー当時の伊集院光を担当したときのエピソードがある。伊集院が放送で話す予定のフリートークを事前に聞き、内容を細かく調整していたというのだ。伊集院が「歯医者に行ってきて……」と言えば「都心の?住宅街の?」、「待合室にいたら……」と言えば「他に患者はいた?」という具合に。

笑いとは「『誰かを楽しませたい』というサービス精神」と藤井は言う。「わかりやすさ」「伝わりやすさ」もサービスの一環だ。自信のあるボケでも、伝わらないと意味がない。笑いを伝えるためには、ある程度の「型」がある。

特集ではその「型」を学ぶコーナーも用意。「コント・漫才に学ぶ笑いの掛け算」では東京03とパンクブーブーのネタを題材に、「落語に学ぶストーリーメイク」では古典落語『芝浜』を題材にして、笑いが生まれる構成を解説する。

なんでもない話を面白くする、読者をミスリードするといった笑いの技法は、小説に活かせるだけでなく、スピーチやSNSなど幅広く使えるはずだ。

(井上マサキ)