創作フィギュア男子アンソロジー『ボーイズ on ICE』男子フィギュアっていいねぇ
創作フィギュア男子アンソロジー「ボーイズ on ICE」(一迅社)。
友情・師弟・ライバル…と、フィギュアスケートに関わる男子たちのストーリーが8編収録。スケート監修も入っている。
コーチがペンギン!(LOVE WAVE/作・かなたか)という展開の作品もあり、アンソロジーの自由さが楽しい。
[冬の日の亡霊/作・298]
将来を期待されている教え子・ダイキに
「スケートをやめようと思って」と相談され、戸惑うコーチの雨宮。
かつて日本代表のフィギュアスケーターだった彼は、絶頂期に突然の引退をしていた。
でも もったいないって何?
俺には ほかの未来なんてないみたいに
外野が何気なく口にしてしまう「もったいない」という言葉の残酷さ。
それを知っている雨宮なのに、ダイキへ「もったいない」と言いそうになる。
25ページのマンガの中で、雨宮の過去は少しの語りのみで描かれない。
「もったいない」という言葉だけで、雨宮の心残りが伝わってくる。
[青のパノラマ/作・逢田めめ]
病院の待合室。
足の関節が悪く運動ができない少年は、ケガで休養中のスケーターと出会う。
ケガを乗り越えてまで、なぜ自分たちは世界と戦うと思う?
スケーターからの質問に、少年は「好きだから?」と答えるがーー
評価して楽しんで 応援するのは おれ以外のすべての人で
みんながいるから
フィギュアスケートは スポーツになる
競技会では、点数がついて順位が出る。
見ているこちらはハラハラするが、競うからこそ選手はチャレンジする。
競う相手は他人じゃない。
だから、フィギュアスケートはすべての選手を応援したくなるスポーツだ。
(とはいえ、ケガはしないに限ります)
全編を通し、世界選手権を5連覇する、フリースケーティングで4回転ジャンプを5回成功させるような「事件」は起きない。
特別なことがあってもなくても、スケートを愛する人たちはたくさんいるんだよねと感じるアンソロジーだ。