『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』社会的に死んだって肉体的に死ぬよりマシなはず
Twitterで数多くリツイートされ、テレビや新聞でも話題になったマンガを書籍化したものが、汐街コナ『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』。監修は『マンガで分かる心療内科』などでおなじみの精神科医ゆうきゆう。
デザイナー時代に残業月100時間だった作者、自殺願望は特になかった。
しかしある日電車に乗る時に「一歩踏み出せば明日は会社に行かなくていい」と未遂をしてしまう。
「なぜ死ぬほど働くのか」という一般的な疑問に、実際に体験した感覚を説明したのが、最初のツイートだった。
「死ぬくらいなら辞めれば」ができない理由 1/2
むかーしの体験談と、そのとき思ったこと。よければ拡散してください。 pic.twitter.com/tImNNIOG56
— しおしおしい@「死ぬ辞め」4/10発売 (@sodium) 2016年10月25日
仕事に忙殺されていくうちに狭くなって行く視野に歯止めをかけたい、仕事は辞めてもいいものだ、というのを伝えるために描かれた本だ。
キャッチーなワードと、具体的なたとえで説明しているので、とても読みやすい。
12億のストラディバリウスを所持していたら、使いすぎて壊すこと無く、毎日メンテナンスするだろう。
なら自分の体は何億かけても買いなおせないのだから、もっときちんとメンテナンスしていいはずだ。
いっぱいいっぱいだと「俺がやらねば誰『が』やる」精神で歯を食いしばって仕事をしがち。
でも実は「俺がやらねば誰『か』やる」。一人欠けても会社は動くシステムになっていることに、気づけないことが多い。
(なっていない場合は会社に問題がある)。
・ヒトにはがんばれる個人差がある
・「好きな仕事だから頑張るのは当たり前」は間違い
・ヒトに配慮するのは、優先順位で一番ではない
・「不幸競争」に参加しない
などの項目が並ぶ。
作者の夫が仕事で限界に達していた時、彼女は「私がヤバイと判断したら一服盛って強制的に休ませる」と言い切ったそうだ。
「社会的に死ぬ」と怯える夫に、作者は「肉体的に死ぬよりマシ」だと言う。
『憂鬱くんとサキュバスさん』は、ブラック企業で完全に心を病んでしまった青年と、彼を狙ってやってきたサキュバスがマメに世話をする様子を、コメディタッチで描いた作品。限界なのに会社に行かなければという青年の姿が生々しい。
田中圭一『うつヌケ』は、一般社会人から芸能人まで、数多くのうつ経験者に、どう乗り越えてきたのかを聞いたインタビュー集。病院での治療や、現在進行系の治療なども含めて具体的に書かれている。