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2017.04.18

村上春樹『騎士団長殺し』とは「謎エロ謎エロときどきごはん」なのか。ゲーム作家と翻訳家が大激論

文:深川岳志

 アオシマ書店レーベルの第一弾は、『村上春樹『騎士団長殺し』34の謎』だ。
 『騎士団長殺し』をさまざまな角度から検証し、謎解きをしている。
 ことのきっかけはラジオ番組での収録だった。話題作の発売だというので、
ゲーム作家米光一成と翻訳家鴻巣友季子のふたりが村上春樹『騎士団長殺し』を紹介したが、発売後二週間でネタバレ的なことが話せない。
 米光一成は、本書を一言でいえばと聞かれて、謎エロ謎エロときどきごはん、と名言を放った。この言葉の真意も、もちろん、本書でしっかりと語られている。
 とにかく、このままではいけない。ネタバレ全開のトークショーですべてをきっちり話したいと相談した二人は、4月2日に下北沢のB&Bで「村上春樹の『騎士団長殺し』をネタばらし全開で語り尽くす会」を決行。
 その全記録(補足多数)+おまけが本書だ。
 後半部分には、当日、イベントに来てくれたお客さんからの質問も入っている。『騎士団長殺し』大読書会である。

 34の謎は『騎士団長殺し』の中で語られていることはもちろん、語られすぎていることやあまり語られていないことにも及ぶ。『騎士団長殺し』は一人称小説なので、基本的には主人公の体験したことだけが語られていく。そこから逸脱した部分にはどんな謎が隠されているのか?
 たとえば、免色と元パートナーとのセックスは、まるで主人公が体験したかのように緻密に語られている。免色が主人公に語ったとしたらあまりにも不自然だ。これはワザとなのか、それとも作者の無意識の発露か?
 よーく読めば不思議だなあと思う観点が次々に登場。
 作中に出て来るお酒「シーヴァス・リーガル」も、お酒好きの鴻巣友季子の手にかかると、一気に深い謎と化す。
 また黒幕を探すのが大好きな鴻巣友季子は、意外な人物が影で糸を引いているのではないかと指摘する。
 本書の大きなクライマックスは、免色渉、ナイスミドルか問題。主人公に深くかかわっていく免色渉は、じつは悪い人? それともただのナイスミドル? 鴻巣友季子と米光一成が対立する立場に立って、免色渉に関する謎を語り合う。
 こどもの存在が村上春樹作品にどんな影響を与えるかを論じるパートも興味深い。
 「昭和のサラダ問題」「リアリティを感じる人物はいるのか」など、客席からの質問も鋭い。
 一度『騎士団長殺し』を読了した人も、本書を読めば、読後感がぐらっと揺らぐだろう。
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 KindleUnlimitedなら0円で読める。