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前前前世から木の枝を剪定してそうな『君の庭。』は、ガチ庭師成長物語

庭師青春物語『君の庭。』一巻が、4月7日から配信されている。

っていうか、タイトル!
出落ちなのかと思いきや、前前前世で口噛み酒するわけではなく、庭を作る人間たちの情熱と、少女の成長と恋愛をがっちり描いた、真面目な庭師物語に仕上がっている。

両親を亡くした高校二年生の少女・岡野かりん。祝福されない子だった彼女は身寄りなし。
ある日、会ったこともない祖父の青木柊造から手紙が届く。「行くところが無ければここに来なさい」。
行った先にあったのは「青木造園」。青年たちが庭師修行をする家だった。
修行中の少年の一人、同い年の教育係の藍川樹一の元で、かりんは「庭造り」の世界に触れていく。

起床は朝5時。毎朝庭の葉や花びらを掃除し、草をむしるところからはじまる。
人間が毎日歯を磨くのと同じで、至極普通のことだ。
毎朝、砂や小石で水や波を表現する「目入れ」を行う。
過去や未来を思い悩むのではなく、今という瞬間をしっかり生きる、という禅の「而今」思想からのものだ。

繰り返し繰り返し、丁寧に労力を費やすこと自体に、意味がある作業。
うまくいかなくてもいい。まずはできないことを知り、今精一杯やる。
自己評価が極端に低いかりんの心に、庭づくりの丹念な作業は、強く響く。

枝剪定の際、「切る」は庭師の忌み言葉だそうだ。
庭師は枝を切らない!? 〜剪定は木を若返らせる〜(日本造園組合連合会)
「いらない枝」を切り捨てるのではない。あくまでも剪定は、木を育てる作業であり、枝一つ一つへの感謝を忘れないように、という考え方からのようだ。
半ば周囲の人から切り捨てられたかのようだったかりんも、庭師の仕事の中で責任を与えられる。自分がすべきことをしっかりやり続けるよう、彼女自身も樹木のように育てられていく。

女子高生盆栽マンガ『雨天の盆栽』は、植物の生き方育て方を通じて友情と成長を学ぶ作品も、一緒に読むと面白い。
植物に毎日の手間暇をかけて愛を注ぐ、という人間の生き方の表現だ。