『妹はメシマズ』こんな恥ずかしい姿、お兄ちゃんにしか見せられないでしょ…ッ
『妹はメシマズ』は、料理下手=「メシマズ」を乗り越えるべく、実践に挑む兄妹コメディ。
売れない芸人をやりながら、居酒屋でバイトをしている兄。
有名大学附属高校に進学し首席を取っている、完璧主義者の妹。
妹は全く料理ができない。
そこで、ごく一般的な自炊スキルを身に着けている兄の元にきて、料理を習う。
彼女がうまく調理できない理由を、この作品はちゃんと明示している。
茹で卵が作れないのは、コンロの火に慣れていないからだ。
ご飯が炊けないのは、水の分量や研ぎ方に対して神経質で、いつまでたっても終わらないため。
野菜が切れないのは、包丁への恐怖心が強く、また均等にするため定規ではかっているから。
頭がいいと「料理くらいできるでしょ」と言って、誰も教えてくれない。
いざ独学でやろうとすると、理想を求めすぎて、失敗する。
彼女のミスは、人から見て滑稽かもしれない。
でも一生懸命な彼女のことを、兄は絶対笑わない。
「こんな恥ずかしい姿、お兄ちゃんにしか見せられないでしょ…ッ」
コンプレックスを周囲に隠し続け、正直な自分を表に出せない真面目少女の、コミュニケーション不全回復物語だ。
昨今の食べ物マンガは、「欲を満たす」方面(「ラーメン大好き小泉さん」「ワカコ酒」など)と、「人間関係構築」方面(「甘々と稲妻」「新米姉妹のふたりごはん」など)に大きく分かれている。
このマンガは後者。作る料理はおにぎりやインスタント麺など、地味。疎遠気味だった兄妹が、当たり前の料理に向き合うことで、兄妹の時間を2人で取り戻しているかのようだ。
この作者の、ウルトラ怪獣が働いている居酒屋を描いた『酩酊!怪獣酒場』もオススメ。