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ほどいたポニーテール、首筋のキスマーク…女の子同士のフェティッシュ標本箱『百合百景』

はちこ『百合百景』の電子書籍配信が始まっている。
フルカラーで、ほとんどが1ページに1組。マンガとイラストで、様々な百合のシチュエーションを描く。

100通りの「百合」は、あまり生々しすぎない。ドロドロネガティブ要素もない。
全てが、ほどよく、心地よいさじ加減だ。
(なおセックスまでいってるカップルはわりと多い)

学校の廊下でキスマークをつけられてしまい、隠すためあわててポニーテールをほどく。
勉強をしている時と情事の時は、教える側が逆転する2人。
友達同士なんだけど、突然相手のことを意識してしまって、まともに顔が見られない。
教え子を好きになってしまった先生が、生徒に勉強を教えてほしいと言われて動揺する。

「百合」という言葉はとにかく曖昧だ。
恋愛、友情、先生と生徒、姉妹、幼馴染、ライバル。あるいはそれ以外の形容できない引力まで、すべて含めて女の子同士の関係を外側から見て「百合」と呼ぶことが、今は多い。
だからこそ、キャラクターの心理と背景をどういう視点で切り取って物語に描くかが、百合作品の勝負どころだ。

ところが『百合百景』は、そのこだわりをほとんどカットしている。カメラで撮ったような一瞬の状況のみで、完全に割り切っている。
女子高生「百合」の中でも、とびきりきれいなパーツを切り取って閉じ込めた標本箱のよう。
「ちょっと百合をつまみ食いしたいな」という時に、難しいことを考えず眺められるのが、この本の強みだ。

描かれている内容は、かなりの部分が読者の想像に委ねられる。
第81景「カメラどころではない百合」。
スマホを構えて抱きついてピースする子と、それであわてて赤面する子。
友達なのか、先輩後輩なのか、恋人なのか。どこにも書かれていない。
タイトルとキャラ名以外の情報は極力カット。各々が妄想して楽しめるようにされている。

そのため100もあると、人によってニヤニヤできたりピンとこなかったりと、シチュエーションによって反応度合いが変わってくるはず。
どのへんに自分の百合感性がマッチするか。ちょっとしたリトマス試験紙にもなる本だ。


写真集『スクールガール・コンプレックス3 女子校』は、かなりこの本とノリが近い。「ぼくの考えた最強の女子校百合」を、フェティッシュなファンタジーとして眺めるには最適。


日常の中で見つけた百合の光景を描くエッセイ・ショートショート『ちいさい百合みぃつけた』も、妄想遊びのスイッチとして、同じテンションで読める。


スカートの長い伝統的ミッション校型百合(例・マリア様がみてる)は、今も大人気のジャンル。
『百合百景』の中で、特にピュア少女感+青春の痛みのある百合にピンときた人には『あの娘にキスと白百合を』がオススメ。
恋する少女だけが持つ刹那の輝きそして赤いリボン『あの娘にキスと白百合を』6