衝撃のウサちゃんトラウマシーンから始まる手塚治虫『ブッダ』
子供心にショックで忘れられないシーンは、いくつかあるが、鮮烈に思い出すのは手塚治虫『ブッタ』の最初のエピソードだ。
っていう人は、ぼく以外にも案外多いに違いない。
マンガ好きで呑んでるときに、何度か話題になって、
「あ、あのウサギ!」「あの決意の目と後ろ姿、思い出して泣ける!」
と大盛り上がりするシーンである。
登場するのは年老いた僧とクマとキツネとウサギのみ。
たった9ページ。台詞はひとつもない。
それぞれのキャラクターの描かれ方、ウサギのあの表情、後ろ姿!
ああああ、読んで衝撃を受けてほしいので、内容は書かない。もどかしい。読んで。
この衝撃の出来事は、師ゴジャラさまの体験であることが語られ、
ゴジャラさまは、強いショックを受ける。
“まるで魂をぬかれた人のようにフラフラと里へおりそのまま十日もねこんでしまわれた……そしてそのあいだにさとりをひらかれたのじゃ この世界の大いなる因果の摂理をな…”
ここから、手塚治虫版ブッダはスタートするのだ。
『火の鳥』と直結するテーマを貫きながら、イナゴの大群来襲、象軍団との対決、獣と心身を入れ替える異能力を持つタッタなど、スペクタクルと魅力的なキャラ満載で、説教臭くないのも素晴らしい。
手塚らしい人間味あふれる動物たちがたくさん登場して、そちらも魅力的だ。
いま(2017年の4月の月替りセール)『ブッタ1』が99円になっている。
ぜひ。
もうひとつ2017年の4月の月替りセール中の手塚作品は『空気の底』。
おっぱいを眺めるロバの表紙絵からして、異様でヤバイ雰囲気ぷんぷんですが、
変態手塚の絶好調作品満載の短編集なので、こちらもぜひ。
以前書いた紹介はこちら→「夫は私より獣を愛してるのです」手塚治虫エロ変態傑作『ロバンナよ』セール中