酒、タバコ、性、ゾンビ『がっこうぐらし!』9巻、大学編がつらい
女の子たちのゾンビサバイバル生活『がっこうぐらし!』9巻が配信された。
この巻で「大学編」に一旦、区切りがついた。
高校の中で、サバイバル生活をしていた少女4人。
彼女たちは、非常時であるからこそ、いつもどおりの日常を過ごすよう心がけていた。それが「学園生活部」。
高校を自分たちの意思で卒業した4人。向かったのは、聖イシドロス大学。
そこにいた大学生たちは、武闘派と穏健派の2つのグループに分かれていた。
大学生たちは、酒を飲み、タバコを吸い、髪を染めている。
高校の制服はギャルゲー的なデザインで、ヒロインのゆきはピンクの髪。
洒落た私服の大学生たちの姿は、別の世界観に見える。
連載雑誌は『まんがタイムきららフォワード』。
高校編は、メルヘンな空間で幸せを謳歌する、「きらら」的美少女表現を継承している。
ゾンビに覆われ、世界がどうなったかわからず、絶望的。でも女の子たちは一致団結。常に前向きで、みんなが友達、という高校校舎内の箱庭が描かれた。
だから連載開始やアニメ化の時、表紙からはわからない「カワイイのに残虐」「まがいものの幸せ」という部分が話題になった。
大学編は、一部のキャラは序盤から行動がドロっとしており、信用しづらい。
思想的に隔たれ、腹の探り合いをする。一緒に生きのびよう、という活気が全然ない。
酒とタバコのシーンは、かなり意図的に挟まれている。「大人」であることを示す記号だ。
「それっておいしいんですか?」という学園生活部のみーくんに対し、「おいしくはないかな」と言いながらタバコを吸う。
大学の中では、男女の性交渉もあった。
直接描写はないものの、事後の様子は描かれており、妊娠もしている。
高校編は性の匂いが皆無で進んできた上に、大学生側(特に男子)がかなり荒れている。性が関わってきた時、学園生活部の子たちは大丈夫なのか、どうしても不安になる。
なんせ、男子に学園生活部の子たちは、武器を向けられ、殴りかかられ、組み伏せられ、と暴力は振るわれ済みだ。
「大人」がもつ自由と、意思決定と、責任のバランス。大人の方が取れていない。
学園生活部の「日常を過ごす」という理想は、多くの人との生活に当てはめた時、ものすごく難しいことがはっきりした大学編。仲良しこよしが通用しない。
精神的に破綻していた子。身体的に崩壊がはじまった子。ストレスの限界はとっくに通り越して、ボロボロ。
ゆき「ずっと同じ日は続かない、いつかお別れだってあると思う、でもさ、知らないうちにいなくなって、生きてるかどうかもわからないなんて、そんなのずるいよ」「だから絶対、最後まで一緒だよ」
平穏な日常ごっこをし続けるのは、未来の見えない戦い。
それでも諦めず、10巻で4人は別の場所に旅立つ。