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ストーリーがうねり始める、圧倒的に緻密な画で(ため息)五十嵐大介『ディザインズ』2

「動」の五十嵐大介をたっぷり堪能できる『ディザインズ』。2巻になっても全く勢いは衰えておらず、読者の倫理観や生命の捉え方を揺さぶり、目に見えている現実の向こう側へと誘う筆致は極上だ。

小惑星に低重力下でも爆発的に繁殖し宇宙線を遮って酸素を発生させる植物を植え付け、人類を移住させるという「ナラ・プラント計画」。農薬開発を手がける多国籍企業サンモント社は、ナラ・プラント計画のため遺伝子操作事業を進め、その中には人類の移住先で行動できる新生物の開発も含まれていた。開発の一環として生み出されたのが動物を人間化させたヒューマナイズド・アニマル(以下HA)。HAを生み出した科学者オクダの謎、サンモント社内の抗争、そしてHAたちの激しい戦いを描いたSFドラマが『ディザインズ』である。

1巻では主人公の蛙の HA「クーベルチュール」の幼馴染である豹のHA「ベイブ」が実験施設から逃走、オクダの開発したものとは大きく異なるイルカのHAたちが鎮圧のために出撃するところまでが描かれたが、2巻ではこのイルカのHAたちと「ベイブ」そして同じ豹のHAである「アン」の死闘からスタート。

さらにこの2巻では1巻以降大きな謎だった天才研究者オクダのぶっ壊れた人格が少しづつ明らかになると同時に、HA計画はどのような経緯を歩んできたのか、そして全てのHAの母体である「ミセスビッグ」の正体が明らかとなる。

物語的には序盤戦が終わりいよいよ大きくストーリーがうねり始めた印象。サンモント社内部の抗争や陰謀の骨格が見え始め、それに巻き込まれていく無垢なHAたちの死闘には心臓がキュッとなる。また、この作品のテーマらしきものが少しづつ見えてきた感じも。

五十嵐大介ならではの緻密な背景の描き込みや、人間と大きく異なる”環世界”(生物それぞれによって異なる感覚器によって生み出される世界の見え方)を持つHAたちに見えている世界のダイナミックな表現も健在。漫画というメディアに可能な表現方法を100パーセント以上活かし切るテクニックはため息ものである。続刊を首を長くして待ちたい。