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恋する少女だけが持つ刹那の輝きそして赤いリボン『あの娘にキスと白百合を』6

お嬢様高校の『清蘭学園』で彩られる女友達、後輩、先輩、従姉妹たちの『恋』と『キス』のオムニバスストーリー『あの娘にキスと白百合を』も6巻まで重ねることとなった。今回は2巻で付きあうことになったクールな日下部千春と単純バカな秋月伊澄、二人のその後が語られている。

清蘭学園ではたったひとり大切な人に赤いリボンを添えた花を贈るのが流行っている。こういう風習、品格のある女子校でいかにもありそうなネタで、この時点でニヤニヤ顔が緩んでしまう。

当時は中等部だった伊澄も同じ校舎に通うようになって、お昼休みでも一緒の二人。ところが伊澄はいつものノーテンキさで「花? あたし花より団子派なんだよね〜!!」と赤いリボンのフラグを潰してしまい、後から気づいて青ざめてしまうけど後の祭り。
そんな折、ほとんど話したことのないクラスメイトの朝倉 亜麻袮(あまね)から赤いリボンを渡されてしまって、ウンウン悩む伊澄に千春が取った行動は……。

日頃からクールで真面目な千春は、伊澄にも容赦なく「勉強しろ」とかアレコレ世話を焼いてくるんだけど、「花より団子派」な伊澄に対して、千春は最高のカタチでプレゼントを贈って、一言だけデレる。その表情、その台詞こそが、恋する少女だけが持つ刹那の輝きで、作者の缶乃氏はこうした青春の煌めきを描くのが本当に上手いんですよ。

そんな千春&伊澄の強固な関係が描かれたすぐ後に、今度は千春が昔好きだった星野 真夜(まや)先輩と再会して気持ちがグラつくのも、二人の愛情が試されている感じがする。
一年前は「星野先輩とだったら死んでもいい」という狂おしい片想いに身を焦がしていた千春。でも今の日常には伊澄がいて……というジレンマは、2巻で星野先輩と千春が準備室に閉じ込められたエピソードがあってこそなので、2巻→6巻と読むと切なさマックスです。

後半は、伊澄に赤いリボンを渡していた朝倉 亜麻袮(あまね)をめぐる三角関係。右手を怪我したことでクラスメイトの亜麻袮に親切にされていた比留間 諒(りょう)は、うっかり亜麻袮に赤いリボンを渡したいことを口走ってしまう。そこで亜麻袮が発した台詞に衝撃が走る。「私にとっては3本目だけど、それでもいい?」

「赤いリボンは1本じゃないといけないのはどうして?」と本気で疑問に思う亜麻袮は、好きな人が何人いても構わない、むしろたくさんいたほうが幸せというタイプ。

それを承知で親友を続けている夕凪 仁菜(にな)は、諒に対抗心いっぱいでガンつけ、壁ドン、そしてゴミ置き場に放り込まれたりとおっかない仕打ちの三連コンボを決める。女子校、怖っ!

実は仁菜にとって、亜麻袮にはいろんな女の子と親しくしてほしくないんだけど、束縛すると今の関係が壊れてしまうから我慢していたのだった。その嫉妬に気づけるのは亜麻袮ではなく諒だけってことで、イラつきながらも諒を必要としている矛盾に悩む仁菜は、ついに寮を家出してしまう。

「わたしは比留間を必要だと思ってしまった。あまねのリボンが増えるのは嫌だったのに…」

ここでようやく仁菜との亀裂に危機感を覚えた亜麻袮が腹を割って話すことを決意するんだけど、その凛々しい顔つきが、伊澄が亜麻袮をフッた時と同じ表情になっていることに注目。意志の強い瞳の上に、眉毛が中央からやや上向きに流れていってます。缶乃マンガにおいて、女の子の眉毛がこの角度になった時が最高の決めシーンになっている。

『あの娘にキスと白百合を』シリーズ全体に言えることだけど、少女たちは悩んでも傷ついても、最後に選ぶのは嘘偽りのない愛で、それがハッピーエンドに繋がるのがたまらなく快感だ。この後に亜麻袮、仁菜、諒の3人がどういう関係に落ち着くのか、ぜひ読んで確かめてほしい。