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現役AV女優紗倉まなの小説『凹凸』に出てくる儲からない人たちの自営業

AV女優紗倉まなによる長編小説『凹凸』が3月18日に発売された。昨年2月に発売された『最低。』に続く2作目である。


主人公は親元を離れて吉祥寺で暮らす24歳・栞と、彼女の母・絹子。親子2代の男女関係、親子関係を描いた物語。でもその裏で、何かに甘えながら、儲からない自営業を続けてきた人たちの現実も出てくる。登場する父親たちはみんな自営業で失敗しているのだ。

絹子の父親・辰夫は、スクラップ屋。よく働き、挑戦的な経営を行っていたものの、のちに失敗。ギャンブルにのめり込んでいたこともあり、多額の借金を抱えてしまう。

栞の父親である正幸は、デザイン事務所を開業している。自分の美的センスを過信し、仕事を選びすぎているため、事実上の無職。お金を生み出すことがないうえ、不倫による携帯電話の使用料が家計を苦しめていた。

絹子は、正幸のことを「金を産むか産まないかを判断し選択していく才能がない」と評価していた。でも、それはスクラップ屋の経営に失敗した辰夫にも当てはまっている。
小説を書きあげないフリーターの小説家志望や、気に入らない客をすぐに追い出してしまう駆け出しのラーメン屋にも通じるものがある。やらない理由やできない理由を探してしまうことでお金を稼ぐことがそっちのけになってしまう。

自営業に失敗した辰夫と正幸は、それからどんな時間を過ごしていくのか。そして、栞の交際相手で映像会社に勤めている智嗣は、フリーランスを選択するのか。
家族の形には、もちろんいろいろな形がある。だけど、一般的に男というのはお金を稼がなければならない。『凹凸』を読んだら、厳しく尻を叩かれたような気分になった。