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トラウマじゃない。明るく地に足の着いた『秒速5センチメートル』コミカライズ版

テレビ朝日で、3月17日深夜3:25から『秒速5センチメートル』が放映される。(参考記事)
アニメを原作とし、監督・新海誠本人がノベライズした小説版、清家雪子が物語を膨らませたマンガ版が電子書籍で配信されている。


主人公・貴樹が、幼いころ少女・明里と出会って恋をし、遠く離れた場所で暮らすことになった様を描いた物語。
アニメでは小中学校時代、高校時代、大人、と3パートに分かれている。モノローグと背景のボリューム感で表現する、叙情的な作品だ。
マンガ版は映画原の内容を噛み砕いて具体的にし、エピソードを大量に追加している。

小学生時代の2人の日々。かつて少年・貴樹が抱いていた夢。大人になって貴樹が付き合っていた彼女・理紗との生活の様子。鹿児島にいる花苗の成長。
小説版にも書かれている、主人公2人が渡せなかった手紙の中身も物語に盛り込まれている。
かなりクリティカルな部分で、これがあるとないとでは作品の見え方がだいぶ違う。

『秒速5センチメートル』は多くの人に「トラウマ」と言われている作品。
検索をすると、たいてい「鬱」の予測ワードが出て来るくらいだ。
「セカイ系」と呼ばれる、セカイの中には君と僕、という広いのに閉塞感のある描写を新海誠は続けてきた。
『秒速5センチメートル』も、小学生時代に出会った2人の初恋のことを、貴樹はうじうじ引きずっている。世界に彼女しか見えてない。

マンガ版はそこに清家雪子というマンガ家が再解釈したことで、キャラクターの心理を少し離れた位置から捉えられている。
失敗も多いけど成長している部分もあるよね、それぞれ進むスピードは別だけど、それでいいんだよ、と広い視野で見ている。
起きてることは基本は同じなのに、切り口はかなり前向きだ。
映画を見た後に、是非読んでほしい。浄化されます。