現実的にヴィランを倒す必殺技とはどのようなものか『僕のヒーローアカデミア』12巻
「ヒーローとはなんなのか」を問い続けるマンガ「僕のヒーローアカデミア」の12巻の配信がはじまった。
ヒーロー界の頂点であるオールマイトが力を使い尽くし、ついに世代交代。
強くて、いるだけで安心できる平和の象徴のヒーローが、今はいない。受け継いだのは主人公の緑谷出久。
ヒーローといえば、必殺技だ。
日本だと、ウルトラマンならスペシウム光線。仮面ライダーなら各種ライダーキック。破裏拳ポリマーなら幻影破裏拳。敵を倒すトドメの技としての意味合いがつよい。
ところがアメコミだと「必殺技」にあたる、強力な技はあまりない。スパイダーマンはウェブを打ちながらスイングして相手をじりじり追い詰めるし、アイアンマンはビームなどを撃つものの、それは戦略の一つ。決め技ではない。
「ヒロアカ」12巻では生徒たちがはじめて「必殺技」を考える。
9巻では、どうやって自分たちの持つ力を限界を超えて出す訓練が行われた。
炎と氷を操れる轟は同時に出す訓練を、電撃を放つ上鳴は電流上限の底上げをしていた。
一方で全身の力を増幅するタイプの出久は、襲ってきたヴィランと戦う中で、全身の骨が持たない力「1000000%デラウェアスマッシュ」で相手を殴った。
Plus Ultraされたその力は、確かに「必殺」の一撃になった。でも二回撃てない。
人を救うには、自分が壊れてはいけない。
12巻で大きな成長が見られた1人が、手から爆風を出すことができる爆豪勝己。
超攻撃型の能力なので、彼が全力で周囲を吹き飛ばすスタイルを選んだら、相手を簡単に殺せる技になっただろう。
しかし彼が編み出したのは、一点集中して貫くピンポイントシュート、徹甲弾だった。
対人戦闘用に威力の増減もできる。連射することも可能。見た目は今までの彼の大暴れな戦闘に比べて、地味だ。
周囲への被害を最小限におさえ、相手を制圧するのに最適。
彼が考えた結果作ったのは、「戦術」のための「必殺技」だ。
他の学校の生徒たちと仮免許取得のために行った模擬戦闘。
他校が自分たちの能力を豪快に駆使してバラバラに動いたのに対し、出久たち雄英の生徒は、細かく「必殺技」を使い、連携プレーを繰り出した。
「勝つこと」ではなく「救うこと」。
派手さよりも、実用性と周囲への気配りに「必殺技」の舵を切った。
これこそが「ヒロアカ」の考えるヒーロー思想だ。