オタクをバカにするなら知り尽くしてからにしろ『IDOROLL』

ロックンミュージシャンからアイドルへ。「IDOROLL(アイドロール)」一巻の電子書籍配信が始まった。

ギタリストを目指していた一ノ瀬一乃、22歳。
技術はあるけど背が小さくて、かわいいけどカッコよくはない。
バンドメンバーは彼女を残してメジャーデビュー。一乃は路頭に迷ってしまう。
そんな彼女を拾ったのは、幼馴染のお姉さん、音羽。
アイドルメイドライブ喫茶を経営している彼女は、ちんまい一乃をアイドルにしようと決める。

インディーズアイドルの成長を、ファンとの関わり方中心に描く、熱血作品だ。
アイドルは芸を見せるだけが仕事ではない。
祭り上げられる資質、「助けたい」と思わせる才能が必要だ、と音羽は考える。
一乃のポジティブさと、小ささと、一生懸命さは、その点才能だ。

ファンはアイドルの元に駆けつけて、応援する。
アイドルはいつも笑顔。自分の弱さに目を背けない。覚悟を決めて人と向き合う。熱を全部ファンに返す。
この循環ができた時に、ものすごいエネルギーが生まれる。
「「負」とものともせず、他人の為に力を発揮し、周囲を笑顔にする存在。世界はそれを「アイドル」と呼ぶのだッ!」
ファン代表のヨシ君のアイドル論。ファンとアイドル両方が一丸とならないと、成立しない。

アイドル文化は、外部からだととてもわかりづらい。
一乃はアイドルライブを初めて見た時「ノリが異様だ」「アイドルの声が全然聞こえないんだけど、この人たちちゃんとステージ見てる?」とドン引き。
ロック文法に慣れてきた人だと、MIXなどはまずライブで見ない光景なので、仕方ない。

ただ、そこに何かのエネルギーを感じたなら、恥ずかしがって距離を置くのは違うはずだ。音羽は言う。
「お前、オタクの何を知ってる。バカにするなら、知り尽くしてからバカにしろ」
「自分の知らないものや理解できないものを見下し、侮蔑する事で己を保つ。お前はそうなるな」
一乃は、アイドルの熱狂の輪の中に、飛び込んでいく。

アイドル界隈を知らない人のためのドルヲタ語解説入り。
一乃を一生懸命推すヨシ君が、どうにも真摯で可愛くて仕方ない。彼のドルヲタ人生を応援したい。


地方アイドルのドルヲタ女性の人生を描いた「推しが武道館いってくれたら死ぬ」も、あわせてオススメ。
アイドルのみならず、ドルヲタ側にもドラマがある。体力ないとできないよ。