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2017.02.09

『空を飛べない僕と死にたがりの先輩』(著:中村龍)ライトノベルか? 文芸か? 境界線に切り込む物語

文:say

ライトノベルと一般文芸の境界線というのは明確なようでいて曖昧だ。
本作、『空を飛べない僕と死にたがりの先輩』(著:中村龍)はその境界線にグサリと切り込んだ作品になっている。

アニメーション業界において、新海誠監督の『君の名は。』のヒットは記憶に新しいが、小説・アニメ・漫画問わず、エンタメ作品においてヒットの鍵となるのはまずはいかに幅広いファン層に訴え、支持を得られるかがひとつの大きなポイントになっている。
一言で言えば間口の広さだが、時にそれは没個性という結果を招くこともある。
ヒットの要因の裏には間口の広さに加え、明確なテーマ性、そして、心に刺さる要素が必要になる。

『空を飛べない僕と死にたがりの先輩』は、主人公の高校二年生の少年・本多一春が、見た目はお嬢様ながらふとした拍子に「死に」たがる奇妙な癖を持つ先輩・芹川美也と出逢い、恋に落ちるところから始まるラブストーリーだ。
ラブストーリーといっても、当初二人の間にあるのは「愛」というより「依存」に近く、日常の居心地の良さにあぐらをかきながら、心のどこかで非日常に憧れる一春が美也の持つ超然とした雰囲気に惹かれていく様が描かれる。
言うなれば「共依存」とでも表現すべき二人の関係はやがて「恋」となり、しかし、彼らの間には美也が抱えるとある問題が影を落とす。

NovelJam2017参加作品として、短編として描かれた本作だが、作品全体に横たわる生と死を見据える倫理観や、哲学的なやり取り、そして、ライトノベル然とした個性的なキャラクター造形は、短編として高い完成度を誇りながらも、読後には一冊の長編としても読んでみたいと思わせる内容になっている。

著者の経歴がアニメ業界出身ということもあり、映像化・コミック化を意識した描写が作中にところどころ見られるのも面白い。
ここは是非、我こそはという出版社様、ビデオメーカー様、お手を上げてみては!

【作品紹介】

空だって飛べると思っていた。
彼女と出逢うまでは――

高校二年生の本多一春(ほんだいちはる)はある日、学校の屋上で不思議な雰囲気を持つ先輩・芹川美也(せりかわみや)に出逢う。
屋上から“飛び”立とうとする美也を一春は引き止め、 二人の関係が始まる。

人を愛すること。この世界を美しいと思うこと。
一春は自問自答を繰り返し、その答えを見付けようとする。

これは僕と先輩の、二度と戻らない青春の日々の記憶――

著:中村龍(なかむらとおる)

編:鈴木沓子
アートディレクター:松野美穂
イラスト:有田満弘
表紙デザイン:kasuga

NovelJam 2017 出場作品

【Amazon Kindle】 http://amzn.asia/1Dwb5VK
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