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盲目の女雀士はいつも笑っている『笑うあげは』光だけが世界のすべてじゃない

全盲の美女、あげは。
超高級店から、サラリーマンひしめく雀荘まで。どんなところでも麻雀を打つ。
盲牌(指で雀牌を触って確認する)なんてもんじゃない。全く牌を見ない。

「笑うあげは」の1巻の電子書籍配信がはじまった。
周囲の人は「目が見えない」というのを「不利」だと思って、彼女と対局する。
目が見える人は、自分の方が有利だ、とマウントを取った気持ちになりがちだ。
中には捨て牌で嘘をつく人もいる。
イカサマなのだが、見えないのだから、確認のしようがない。

けれどあげはは、彼等に正々堂々と勝つ。
「視覚の他に4感もあります。それだけあれば麻雀を打つのには充分です」
「光だけが世界のすべてじゃないってことです」

あげはは、苦悩などは一切見せない。
どんな時でも「視覚障害からくる筋肉のクセ」といって笑顔。
心からゲームを楽しみ、強い相手に無双する様を見せてくれる。
「この世に本当の絶望があることを、わたしもね、ちゃんと知ってますから。だから絶望が終わりじゃないことも知ってます。わたしたち人は、闇の底でだって遊ぶんですよ」
ハンディキャップを楽しいものやカッコいいものに変えるのは、フィクションの仕事。
座頭市の太刀筋が鋭いように、あげはの打つ麻雀には、迷いがない。


作者の田中ユタカは、「愛人[AI−REN]」「ミミア姫」のような人間愛の物語や、「初愛」など恋と性を、丁寧に描いてきた作家。
人はどんな状況でも楽しむことができる、輝ける。人間賛歌の根幹は、この作品にもつながっている。
なお長編「ミミア姫」は、マンガ図書館Zで無料公開されている。
ミミア姫 マンガ図書館Z
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