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「1週間以内に書店で買ってくれ(悲鳴)」初速ハックよりも冴えたやりかた

『スティーブズ』『ニブンノイクジ』等で人気の漫画家うめの小沢高広さんが『日経エンタテインメント! 2017年3月号』で、「マンガの『初速』問題は、CD業界の握手商法と同じ」という話を書いた。
「話題になったから書いたんじゃなくて、書いたの二ヶ月前なんだよ……」とちょっと愚痴っておった。
が、まあ、紙媒体は出るまでに時間がかかる。しょうがない。

まだ記事は読んでない。
もちろん読んでから書こうと思ったのだが、電書版が見つからなかった。
書店まで行きたいが、「昼までに原稿くれー」と言われているので時間がない。
ので、読まずに、内容を予想して、書く。

「ハックだから、そんな方法は続かないよ」って話題だろう。
そりゃそうだ。
初速が良ければ売れるというデータがある→初速だけをチェックして続刊の有無を決めよう→読者に頼み込んで初速を強引に伸ばそう→初速が良ければ売れるというデータに信憑性がなくなる→初速が伸びても続刊の有無は決められない。
ってなっちゃうだろう。

実は、初速が良い感じだと装う販売促進技法は昔からあった。
たとえば、こういう方法。
むかしは紀伊國屋書店のデータが重視される傾向にあった。
そこで、知人を使って、初日に何冊も紀伊國屋書店本店で買ってもらう。
「紀伊國屋の領収書があったら、あとから全額出すからよろしく」と頼んだりする。

他にも、
新刊を持っていれば入場できるというイベントを紀伊國屋書店の近くで行う。
って作戦を聞いたことがある。

ぼくは、こういった地道な努力は嫌いじゃない。
個人でやってるぶんには、さしてデータを乱さないし、頭を使って、おもしろい方法にチャレンジすることであれこれ見えてくる感じは、好きだ。

でも、「1週間以内に本屋で買ってくれないと重版されない」って脅されると買いたくなくなるで書いたように、作者がTwitterで懇願するようにツイートしなければいけない状況は、あまり好きじゃない。
それは、ハックというよりも、悲鳴のように聞こえるからだ。
作者がおもしろい作品を作る環境を生み出すことは、出版社の仕事のひとつなんじゃないかなー。

小沢高広は、『スティーブズ』の新刊が出た初日、書店めぐりをして、その様子を随時ツイートしていた。
その前には、初速の大切さを情報としてツイートしていた。
「初速が悪いと続刊が出ないから買って」といったトーンではなくて、自分たちが初速を伸ばすためにどういった努力をしているかを読者に示した。
とてもスマートだと思う。(っていうか、小沢さんは企みの人なんで、それぐらの演出はちゃんと考えるんだよな)

『日経エンタテインメント! 2017年3月号』の記事も「漫画家の現場」を書く連載っぽいので、楽しみ。