話題沸騰電子書籍『ど根性ガエルの娘』紙媒体で緊急出版。電子書籍→紙媒体の流れくるか
●ネットの流れと、「ど根性ガエルの娘」異例の緊急紙媒体出版
「ど根性ガエルの娘」が1月20日公開分の15話で、ネット中に一気に話題が広まった。
これを受けて、2月17日に紙媒体書籍版の発売が決まったそうだ。
紙媒体の出版はそれまで全く予定になかった。
「ど根性ガエルの娘」1・2巻の紙コミックスが、2/17(金)に緊急刊行と決定いたしました!先週1/20公開の最新話を「衝撃の第15話」と皆様が話題にしてくださってお陰です…!それからサイトがサーバダウンを連発したことが社内でインパクト大でした(笑)(つづく㈰)
— ヤングアニマル編集O野木 (@ya_onogi) 2017年1月26日
「ど根性ガエルの娘」は、最初は週刊アスキー連載で、KADOKAWAから書籍版1巻が出版されていた。
この時、電子書籍版はない。
途中から白泉社の「ヤングアニマルDensi」に移籍。
絶版になった1巻と、「アニマルDensi」連載分を含んだ2巻が、昨年の11月1日に、電子書籍のみ同時刊行された。
●Twitter上のバズ効果の、ばかにならないパワー
1話は「娘の大月悠祐子が描く、父・吉沢やすみの横暴による家族崩壊からの、再生物語」だった。
15話で「実は現在進行形でめちゃくちゃです」とひっくり返したことで、特にTwitterでものすごい勢いで話題が広がった。
1話と15話が「誰にでも読める」状態なのが大きかった。連動した話だったので、両方見ないと意味がない。
公開されたその日、アクセス過多でサーバーがパンクしっぱなしだった、という事自体が(よくはないけど)宣伝になった。
同じタイミングで、吉沢やすみの息子が出た田中圭一のインタビュー集「箸とペン」が、無料公開されていた。
これが「ど根性ガエルの娘」の惨状を、偶然か狙ってか、裏付ける証拠になったのだ。
今回はレアケースとはいえ、先に無料のWEB漫画、すぐに手に入る電子書籍ときて、どのくらいバズるか見定めた上で、紙媒体を出すか決めていくというのは、かなり有効な手段になりそう。
同時発売じゃない点は作者や出版社も意識しており、内容に少し差別化が施されている。
『ど根性ガエルの娘』1巻&2巻、紙の単行本化が決定しました!!2月17日発売予定です。電子版単行本限定の描き下ろし漫画は収録されませんが、描き下ろしイラストとあとがきが新たに入ります。皆様のお陰です!!本当に有難うございます!!! pic.twitter.com/jNilJnaLJr
— 大月悠祐子 (@inunohana66) 2017年1月26日
似たようなバズ効果で広がったのが、pixiv発のエッセイマンガ「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」。こちらは紙媒体が先行。
書籍化したところ、あっという間に完売枯渇。「難民」が続出。
これが引き金となって、「電子書籍版の超前倒し」が決まった、なんてパターンもある。
●電子書籍先行の流れ
ちなみに「電子書籍のみだったマンガや小説が、後に物理書籍化される」というのは、セルフ出版だと、今までもそこそこある。
デジタルネイティブ世代を描くショートショート「バイナリ畑でつかまえて」はITmedia PC USER連載作で、最初は400円とかなり安い値段で電子書籍が出ていた。奥付がないのでおそらくKDP。
一年後、2016年8月2日に、アスペクトから紙媒体書籍版が出ている。
「ひとり暮らしの小学生」はもともと作者がKDPで2014年に出していた、フルカラー4コママンガ。
宝島社「このマンガがすごい!WEB」で再編集と加筆修正の上でリブート公開。2016年5月に書籍版が発売された。
宝島社は文庫やコミックをほぼ電子書籍化しないので、リブート版は書籍版のみ、旧作は電書のみ、という変わった状態だ。
出版社から電子書籍が先行、後に紙媒体、というのはまだそれほど多くはない。
一方で増えつつあるのは、オンデマンドペーパーバック形式。
電子書籍で配信した本を、注文に応じて印刷する、というスタイル。
値段が跳ね上がる難点があるものの、紙媒体で本を確保したい人には便利。