うつは心の風邪じゃない、心のガンだ「うつヌケ」

「そんなに重く考えないで、うつは誰でもかかるもの。たとえるなら…うつは心の風邪」
よくある謳い文句に対して、「私をスキーに連れてって」の脚本家・一色伸幸は言う。
「ちがう、風邪なんてなまやさしいもんじゃない。うつは心のガンだ」

田中圭一が様々なうつ経験者の体験談をマンガ化した「うつヌケ」の電子書籍配信がはじまった。

うつでまったくベッドから出られず、2年間休んだという一色のケース。
ガンだと思えば、仕事を休んで当然だ。
病気なのだから「私がもっと気づいてあげられたら」と周囲が思い悩む必要もない。
体験手記「うつから帰って参りました」として出版しているこの主張を、彼は「うつヌケ」の中でも語る。

パニック障害で飛行機に乗れなかった筋肉少女帯の大槻ケンヂ。
多重人格のAV女優たちと接していた監督・代々木忠。
責任感にとらわれすぎて幾度もうつが発症している小説家・熊谷達也。
いろんなジャンルの著名な人が、経験談を語る。
一方で雑誌編集者、高校教師、サラリーマンなど、無名の一般人の体験談も数多く載っている。
置かれている環境、症例、みんなバラバラだ。

「こいつらは「幽霊」じゃなくて「妖怪」だ。好ましい存在ではないけれど、つきあい方がわかればけっして怖くない」と田中圭一は「うつ」について語る。
この本に載っている内容が、必ずしもうつの特効薬になるわけではない。
描かれているのは、うつの人たちが、あやふやした「妖怪」と、現在進行形でどううまく付き合っているかだ。
「諦めていい」「休んでいい」「助けを求めていい」と思考を変えた人たちの経験談は、うつの時迷走しがちな視点の切り替えの支えになるはず。