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女子高生版椅子の中の愛慾『パラフィリア〜人間椅子奇譚〜』

亜間宮瞳子はある日、憧れの生徒会長・神楽木マリが椅子に座って眠っているのを目撃する。
この椅子は、いつも先輩に触れていられる。
うらやましい。
瞳子は椅子に細工をほどこし、中に裸で入り込んだ。

佐藤まさき『パラフィリア〜人間椅子奇譚〜』の電子書籍配信がはじまった。

椅子に入り込んで、先輩と密着して感触を味わい、匂いをかぎ、聞き耳をたてる。
さすがに瞳子も「卑怯で卑猥で下衆なこと」と自覚はしているが、やめられない。

「椅子の中の恋(!)それがまあ、どんなに不可思議な、陶酔的な魅力を持つか、実際に椅子の中へ這入って見た人でなくては、分るものではありません。」
「これこそ、悪魔の国の愛慾なのではございますまいか。」
モチーフになっている江戸川乱歩『人間椅子』の一文。
窃視嗜好の物語だ。
『パラフィリア』ではこれをうまくいかして、瞳子が生徒会長の日常を盗み見る喜びに目覚める様子を描いている。

瞳子が椅子の中にいる時、神楽木先輩と男性教師は椅子(自分)の上で不倫行為を行うようになる。
だが瞳子は、それを涙目で見ながらも、男性教師に嫉妬を一切しない。
瞳子は神楽木先輩の、知らなかった一面を見た、と興奮してしまう。
あまつさえ、それを椅子の中から録画してコレクションし、愉悦にひたるようになる。

1巻の後半では瞳子はこう言う。
「可哀想な先輩……生徒会以外でも見守ってあげたい……」
一度知ってしまった「陶酔的な魅力」。
覗くことで得られる特別な自由を知ってしまった彼女は、歯止めが効かなくなっていく。

江戸川乱歩の『人間椅子』はパブリックドメインのため、無料で読むことが出来るので、未読の方は是非。