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「君の名は。」と較べてみよう『女の子の身体に入れ替わっちゃうアンソロジーコミック』

「女の子の身体に入れ替わっちゃうアンソロジーコミック」の電子書籍配信がはじまった。  

新海誠「君の名は。」が現在進行系で大ヒット中。

「入れ替わり物語」は平安時代からあるものの、「入れ替わってるー?!」のCMのおかげで、お茶の間にまですっかり定着した感がある。
このアンソロジーは、「男女の心身交換」を題材にした、創作作品集だ。

うがつまつき「稀によくあるVR冒険譚」
MMOVRゲームで、プレイしているキャラクターアバターの性別が入れ替わってしまう作品。
ネット上の外見と中の人の乖離は、間違いなく現代の「性別入れ替わり」だ。

水崎弘明「ブレイブ・チェンジ」。
ケンカが得意な不良少年。クラスメイトの少女と入れ替わってしまう。彼女は魔法少女だった。
少女は今まで、マモノのことが恐ろしくて、怯えてしまって戦えなかった。
少年は少女の身体で考える。知らない人のためマモノの前に立つ彼女が、どれほど強いのか。

男女入れ替わり作品は、心身の性の感覚を、別角度から表現するのにもってこい。
ひいては、社会的な性差や、男性が求める女性像またはその逆が、浮き彫りになる。

りしん「高梨と花房」では、少年少女が入れ替わった後、同性にモテモテになってしまう描写がある。
自信に満ちた少年の心を持った少女はとても凛々しいし、少女のたおやかさを持ったやさしい少年の姿は色気にあふれる。
その方が魅力的に見える、というのはちょっと面白い。

この「理想の男子・女子像」は、「オレが腐女子でアイツが百合オタで」でも読むことができる。


BL大好き少女と、百合大好き男子が入れ替わった。
自分と同性が仲良くなる、千載一遇のチャンスだ。
だが少年(in少女)は、中身が男な状態で百合なんて許されないと苦しむ。
ここで「ラッキー」とすんなり受け入れられないところに、作者の考える「性」や「百合」「BL」のありかたが見える。

ところで、アンソロジーのタイトルが「女の子の身体に入れ替わっちゃう」になっているのは、かなり気になる。
もし「男の子の身体に」にタイトルが変わっていたら、あるいは「男女が入れ替わっちゃう」だったら、本の方向性はどう変わるんだろう?