スクールカースト最上位の女子高生が、最底辺に引きずり降ろされて『17歳の塔』
女子校スクールカーストを描く藤沢もやし「17歳の塔」が配信されている。電子書籍では単話で7話まで、書籍版は2巻(9話)で完結済みだ。
女子の間では、グループごとによる階層ができやすい。
大島永遠「女子高生」4巻ではSランクに「カリスマギャルグループ」、Aグループが「ギャル予備軍」、そして彼氏もち、彼氏なし、部活グループ……と力関係がある、と解説している。
その最下層になるのが地味系グループ。
いじめられているとかではなく、本人たちが感じている「上か下か」、相対的な話だ。
「17歳の塔」の高瀬理亜は、そのカリスマギャルグループにあたる。クラスの中でも目立つ美人。グループの友人は取り巻きで、ヨイショしている。
地味系グループにあたる、もっさりした少女・小田嶋美優は、彼女に憧れ、慕っていた。理亜もその関係を気に入っていた。
ところが、イケメンな大学生の彼氏ができてから、美優は態度を突然変える。
理亜がモデルのオーディションに落ちていることを暴き、「イタい」と煽る。
カッとなって美優を殴った理亜。
理亜は、スクールカーストの最下層に引きずり降ろされた。
少女たちは日々、静かな戦いを繰り返す。
友人関係を崩して上から眺めることで、優越感を得る。
自分が有利なグループから外れたことに焦り、次のトップに媚びる。
劇の主役になったことを妬まれて、プライベートを盗撮され、学校に行かなくなってしまう。
本当に狭い、クラス単位の話だ。しかもたった1年の間だけ出来事。
だが17歳の彼女たちにとって、自分の居場所確保は死活問題だ。
「それは死ぬほどどうでもよくて、でも死ぬほど重要なこと」
少女たちの全力で足の引っ張りあいは、広い視野で見たらくだらない話だし、後になれば笑える話だ。
同時に、自分の全てを費やして歯を食いしばり、人間関係にしがみついた記憶は、高校2年という瞬間を生きた証でもある。
失墜した理亜が、中学時代に何気なしに傷つけてしまった少女と、静かに同じ部屋でマンガを読むシーン。
キラキラは、していない。これも青春。
残酷を楽しむ物語ではない。
「耐えて生き抜け」という応援歌だ。