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21世紀のぼくらは中森明菜が大好きだ『スローモーションをもう一度』

21世紀の高校生が80年代にハマる青春グラフィティ「スローモーションをもう一度」が配信されている。

スポーツが得意で、クラスのイケてるグループに所属する少年・大滝。
彼はいつも、なんとなくアンニュイだ。

理由は、彼が「80年代文化」が大好きだからだ。
かつてその趣味でバカにされた。今、学校で「ダサい」と思われるわけにいかない。
こっそり1人で中森明菜を聞いて、涙する。
80年代アイドルの写真をスクラップしてドキドキする。
「トッポイぜ」

ある日、古びた建物から中森明菜「少女A」の歌が聞こえてくる。その声は、クラスメイトの少女・薬師丸。
彼が飛び込んだその部屋には、80年代ポスター、フラワーロック、バービー人形、レコードプレーヤー……そして普段ぱっとしないのに、聖子ちゃんカットに髪を整えた、80’sアイドルのようにかわいらしい薬師丸だった。
クラスメイトに内緒の80年代趣味を、2人は共有していく。

一緒に寄り添ってウォーターゲーム(水中輪投げ)をやりながらときめいてしまう。
レア物スカイホッピー(バネが付いていて、乗ってぴょんぴょん跳ねるおもちゃ)を入手して、2人で不器用に練習する。
ケータイを持たない薬師丸には、ポケベルで連絡をする。
スケバン刑事のヨーヨーで遊び、早見優の振り付けを何度も練習しする様子は、とても楽しそうだ。

今年はファッション雑誌やTVで、80年代スタイルが頻繁に扱われていた。今の二十代が見たことがないものばかりで、新鮮に映るのだろう。
このマンガはというと、「昔は良かった」という懐古作品ではない。今の少年少女が「80年代」の輝きに、純粋に惹かれている。

章ごとの扉絵が80年代タッチなのも、素敵。
周囲に自分たちの趣味をオープンにできれば最高だろう。でも「2人だけのヒミツ」って、もっとよくない? バイクの免許とって2人で渚をタンデムできたらいいんじゃない?