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ゾンビもオタクも理解できないからって追い出すのか?『ゾンビが出たので学校休み。』

オタクとゾンビの「差別問題」。むうりあん「ゾンビが出たので学校休み。」3巻が11月7日から配信されている。
表紙を見るとかわいい女の子がゾンビと闘いサバイバルするマンガに見えるが、戦闘シーンは皆無だ。

ゾンビのパンデミックが人口密集地で勃発。政府はゾンビを都心に隔離し、人々を疎開させた。
ところが長野から修学旅行に来た少女たちが、秋葉原に取り残されてしまった。
あえなく立てこもり生活をはじめる一行。意外にもゾンビたちは、思ったほど襲ってこない。
人に噛み付いて感染させるよりも、仕事や遊びなど、ゾンビ化する前の「日常」を反復することに執着しているからだ。

秋葉原にいるゾンビは、元オタクばかり。
同人ショップでは、黙々と同人誌を読み続けている。ゲーマーはずっとゲームを続けている。アイドル好きのゾンビは、大好きだったアイドルの幻影を見て泣き続ける。
町を荒らさず、何かを盗むこともない。
ゾンビはいるが、「悪人」はいない。

ただし、噛まれたらやっぱり感染する。
ある檻に閉じ込められていたゾンビは、たまたま少女を噛んでしまう。
彼が我に帰った時に罪の意識が芽生え、壊してしまった自分の檻に戻って、泣きながら鉄格子を戻す。

一方、外の人間居住区では、ゾンビをダンプに乗せて、隔離地域に流し込む。
少女たちは困惑する。
「みんな…『掃いて捨てる』しかないって思ってるのかな…ここからゾンビさんを助ける方法はないのかな…」

「理解できない存在=ゾンビ」に、理解されず追いやられてしまったオタク像を重ねている。
話が進むごとに、ゾンビも元は人間だった事実が重くのしかかる。
もちろん、生きている人間に迷惑をかける可能性は間違いなくある。
だからゾンビ側は、人間に受け入れられるためのルールと譲歩が必要だ。

「外の世界とここは違うんだぞ ここのゾンビはドルオタにアニオタ… ゾンビじゃなくても生き辛い奴らばっかじゃん」
生き辛いから、喧嘩腰になるのではなく、姿勢を正すことも必要だ。
ラストでは、ゾンビたちが人間に受け入れられるよう、ある行動を取る。
それは、オタクがよく守るマナーに、とても似ている。