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地本草子先生の新作『夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進』について本人に聞いてきた!!

こんにちは。アオシマ書店の店員2号、八田モンキーです。

このたび、地本草子先生の新作『夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進』(ダッシュエックス文庫)がめでたく発売となったそうなので、新作のお話を聞きに行ってまいりました。


ダッシュエックス文庫公式ページ(試し読みアリ)

作品の世界観について

八田 : ずばり、この作品はどんな物語ですか?

地本 : ダークヒーローものですね。SFですが、ガチンコのSFほどかたくるしいわけではないです。あと、ディストピア的な要素も強いです。

八田 : 世界観について、もう少し詳しく教えてください。

地本 : この世界では、普通の人間のほかに、ヒーローとヴィラン(villain : 悪役の意味)というのがいて、全部で三種類の人間がいます。ヒーローは絶対的「正義」で、ヴィランは絶対的「悪」。正義の側(普通の人間を含む)は、「超人機関」という、いわゆる「国連」的な機関でヒーローたちを管理していて、ヴィランたちを退治している、という構図です。

八田 : ヒーローは超人なんですね。どんな能力があるんですか?

地本 : 普通の人と違って、「チャンバー」という、エネルギー増幅器官みたいなものを、ヒーローとヴィランは持っているんです。で、それに陽性とか悪性とかがあって、陽性だとヒーローになって、悪性だとヴィランになるみたいな感じです。能力としては、たとえば瞬間移動とか、炎を操れるとかですね。ヒーローやヴィランひとりだけで、いわゆる「抑止力」になるくらい強いです。

八田 : ヒーローとヴィランの違いは?

地本 : 詳しいことは本を読んでいただいて…という感じなんですが、ヒーローと違って、ヴィランの場合は、その能力を利己的に使うというか、たとえば、作中に出てくるメテオというヴィランは、なぜか旧約聖書の大洪水を再現しようとして、南極に隕石を落としたんですよ。なので、作中の世界では、世界の海水面があがっていて、季節も少しおかしい。関東も、浦和のあたりまでが海になってて、「サイタマ湾」がある。で、対岸に松戸が見えて、真ん中にスカイツリーがあるみたいな。ちょっと脱線しましたけど、ようするに、ヴィランのほうは大きな組織を形成しているとかではなくて、それぞれがそれぞれの自己中心的な目的を持って悪事をはたらいているということです。

八田 : サイタマ湾(笑)。なるほど、ディストピアな感じがしてきましたね。

地本 : ディストピアという意味では、ヒーローとヴィランという、シンプルな二項対立が重要な要素になっています。ヒーローやヴィランが持つ「チャンバー」は、先天的にも、後天的にも備わります。たとえば、残酷な場面のあるゲームとか映画とかを見ていると、悪性のチャンバーが発生すると信じられているんです。だから、ヒーローを管理する「超人機関」は、その予防のために、人々に「正義」を絶対的なものとして信奉させようとする。それで人々は、盲目的に「正義」を信じるようになる。そういった大衆の信じる宗教じみた「正義」と「悪」の二項対立が、世界観に大きく影響しています。
あとは、物語の舞台になる「リアクタ・シティ」という都市を見てほしいと思っています。この都市は、「リアクター」という、ほぼ無限大のエネルギーを生み出す永久機関のようなものを世界で唯一持っていて、そのことから、日本にありながらも、モナコみたいなミニ国家として、ある意味で独立しているんですね。さらに、「ジュネーブに国連の本部がある」的な感じで、世界中の超人機関の本部がリアクタ・シティにある。だから、世界で一番安全な都市であって、その反面、世界から隔絶された都市なんです。そうした都市の空気感を、是非味わってほしいと思っています。

主人公について

八田 : 主人公について教えてください。

地本 : 主人公のユウマは、史上もっとも有名なヴィランの息子です。

八田 : 魔王の息子ということですな。

地本 : まさにそんな感じです。ユウマの父親は、史上もっとも有名なヒーローのMr. アルティメットと相打ちになったヴィラン、イヴィルエンドです。Mr. アルティメットは、「アルティメット忌(き)」と呼ばれる、人々が自分たちの正義を確かめ合う祭りみたいなものの代名詞になるほど、伝説のヒーローなんですね。相打ちとはいえ、その伝説のヒーローを殺したのがユウマの父親なので、まあ悪の権化みたいな存在です。

八田 : では、主人公はヴィラン側の人間ということですか?

地本 : いや、そういうわけでもなくて、それを高校生のユウマは隠して生きているんです。この世界では、ヴィラン本人だけでなく、ヴィランの息子も悪だと決めつけられ、迫害されます。なので、ユウマは父親のことを隠し続けています。さらに、ユウマも父親と同じ能力を持っているんですが、能力の特性上、それをつかってしまうとユウマがイヴィルエンドの息子だとバレてしまうため、それさえも隠して生きています。

八田 : つまりそうした秘密と葛藤をもつ主人公の物語だと。

地本 : そんなユウマのところに、女の子のヒーローが転校してきて、彼女を通じてヒーローに少し憧れてみたり、クラスメートの父親が超人機関からヴィランに認定されて、いじめられるそのクラスメートを助けたくても助けられなかったり。あとは、誰かを助けるために、自分の能力を発動せざるをえない状況になったり…ということで、続きは本を読んでください(笑)。

作品のイチオシポイント

八田 : では最後に、作品のイチオシポイントを教えてください。

地本 : まず、ヒロインがかわいいことです!

イチオシポイント① ヒロインがかわいい

地本 : 本の表紙にもなっている「ブレイザーガール」ことアカリちゃんは、自分の感情に呼応して周囲の温度が上がる、という能力を持ったヒーローです。だから、自分の感情を平静に保つために、感情を消す訓練をしていて、無表情なんです。でも、たまに机を焦がしちゃったりするから、かわいい。

イチオシポイント② イラストがかわいい

地本 : 見てもらえばわかると思いますが、赤井てらさんのイラストがとてもかわいいです。

八田 : 赤井てらさん、僕もとても好きなイラストレーターさんですが、少しだけタッチが普段と違いますよね。すこしアメコミっぽい感じがします。

イチオシポイント③ 『黒猫の水曜日』との関連性

地本 : じつは、スーパーダッシュ文庫(同じく集英社)で書かせていただいた『黒猫の水曜日』と、世界観が共通しています。『黒猫の水曜日』の、だいたい70年後の世界が今回の作品の世界観になっています。同じ単語とか、アレとかアレとかが出てきます。なので、『黒猫の水曜日』を読んでいただいた方なら、『黒猫の水曜日』の世界があのあとどうなっていったのか、というのがだいたい想像できると思います。前作を読まれた方は、是非お買い求めください!

八田 : 本日は引っ越し前日のお忙しいなか、ありがとうございました。

地本 : いえいえ。それより引っ越し当日、飼っている猫が暴れないか心配です。

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池袋の居酒屋にて

と、いうことで、地本草子先生の新作、『夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進』は、絶賛発売です!

『夜明けのヴィラン 聖邪たちの行進』地本草子(Amazon.co.jp)
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地本先生のTwitterアカウント

ちなみに、このあと、小説家になるまでの下積み期間や、小説家になってから現在にいたるまでの話を、地本先生から色々とお聞きしました。次回、そのあたりのことも書いてみようかなと思っています。こうご期待くださいませ。