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11/12公開映画「この世界の片隅に」原作を一度も読み返していない理由

こうの史代『夕凪の街 桜の国』は傑作だった。
原爆投下後の広島市基町を舞台に生き延びた人を描いた作品だ。
2004年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。

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2008年に、こうの史代の新作『この世界の片隅に』が出た。
広島県呉市が舞台、主人公は浦野すず。
正直なところ『夕凪の街 桜の国』が全身全霊を込めた傑作に映っていたので、読む前は、その補足的な作品だろうとさえ思っていたが、違った。

最初の3篇は読み切り短編として掲載された。
昭和9年1月、「ひとさらい」にさらわれた浦野すずを描いた短編。
昭和10年8月、お祖母ちゃん家での一日を描いた短編。
昭和13年2月、好きな場所を写生する授業。「帰らん お父とお母がのりも摘まずに飲んだくれとるし。描かん 海 嫌いじゃし」と言って絵を描かない水原くんに「描きたきゃお前が代わりに描けや」と言われて、浦野すずが、白うさぎに見える白い波と、それを観る水原くんを描く短編。
と、戦時下に生きる少女の日常を描いた連作短編だ。

この3篇をプロローグ的に配して、連載第一回目がスタートする。
第1回18年12月、第2回19年2月、北斗周作のところに嫁入りする浦野すず。
この後、軍港・呉で暮らす浦野すずの日常がていねいに描かれていく。

各話のタイトルは、何年の何月かだけを示すシンプルなものだ。
だが、読者はもちろん、刻々と、昭和20年8月6日が近づいてくることを意識せざるを得ない。
昭和20年8月6日午前8時15分、広島市に原子爆弾が投下される。

最初に読んで以来、この作品を読み返していない。
あまりにも心を持っていかれ、下巻で、泣きつかれるぐらい泣いたからだ。
しんどい。

アニメ化されると聞いたとき、あのマンガでしか表現しえないような作品をどうやってアニメーションにするのだろう?と驚いた。
11月12日(土)劇場用長編アニメ「この世界の片隅に」が全国公開される。
観に行くことを想像しただけで泣きそうになる(馬鹿だ)。