『AV女優とAV男優が同居する話。』の取り返しのつかなさ

「AV女優とAV男優が同居する話。」がKindleなどで10月11日から配信されている。

コミティアで発表され、電子書籍配信されている「AV女優とAV男優が同居する話。」シリーズをはじめ、何作かの短編を加筆修正しまとめたもの。一話だけはKindleUnlimitedで配信されている。

柊梓。セックスが好きでお金の入が大きいので、AV女優をやっている。
ルームシェアすることになった男性は、AV男優の館石大地。仕切りはカーテン一枚。
2人とも、全然動じない。
ご飯を食べながら言う。
「カメラ回ってない所で、金にならないセックスしてどーすんの」

何日も過ごすうちに、情が湧いてきた。
大地「同業者なら割とうまく行くのかもしんないよ……」「っていうか恋人として、梓とやっていきたいなと」
2人は笑顔になった。

後日、AV監督は言った。
「じゃあ今日は、2人に出演してもらいます」
2人の初めてのセックスは、見世物として売り出される。

この作家は、思い込み・勘違いからくる、取り返しのつかなさを描くのがうまい(「AV女優〜」は一応フォローが入っている)。
全然都合良い展開にならない。
短編連作「兄が好きな妹と妹が怖い兄の話。」は特に重たい。
仲良しだった兄2人、妹2人。性的な感情が混じってしまったことで、関係は一気に崩れる。
兄が妹の告白とセックスを拒絶した日の後、彼女が兄に渡した一枚の紙は、一生の呪いになった。

物静かな男子につきまとっていた少女が主役の「自意識過剰なあたしの話。」、DVを受ける妻の苦しみを描く「一日一回、あなたを好きだと思わせて。」なども収録。

大失敗するから成長する。
わかってはいるけど、その時感じた悔恨は一生モノだ。