無料で読める江戸川乱歩 10月21日は乱歩の誕生日
今日10月21日は、江戸川乱歩の誕生した日。
しかも今年2016年は、乱歩作品の著作権保護期間が終了の年。
パブリックドメインとなり、社会の共有財産になった。
というわけで、Kindleにも青空文庫版の江戸川乱歩作品がいくつか登場。
江戸川乱歩作品が、0円で読める。すごい。
いま、0円で読める江戸川乱歩オススメ作品5作を紹介しよう。
『パノラマ島奇談』
あまりの奇想に読書ハイにならざるを得ない傑作。
死んだ大金持ちに成り代わった人見広介が主人公。
手にした財産すべてを使って無人島を荒唐無稽なユートピアに変えてしまう。
このユートピアの描写が、想像力の跳躍があまりにも渾身。狂気のドライブ力で、めくるめく夢想の世界に浸ることができる。
人魚コスプレ美女がダンス。ガラスの屈折によって竜宮城のように魚たちが舞う海底通路。地上では、複数の女体によって作られた蓮台、人肉花びらに乗って移動。
荒唐無稽もいいかげんにしろって感じなのに、乱歩の迫力ある文章で描かれると、ものすごい気がしてくるから不思議だ。
そして、怖ろしくも美しく悲しいラストシーン。
パノラマ島の顛末を読み終えて、はっと現実にもどったときに、自分の理想郷を夢想する恐ろしさを考えさせられるのだ。ぼくのパノラマ島は、どんなふうなのだろう、と。
「人間椅子」
“普通の場合は、主として容貌の美醜によって、それを批判するのでありましょうが、この椅子の中の世界では、そんなものは、まるで問題外なのでございます。そこには、まる裸の肉体と、声音と、匂とがあるばかりでございます。”
椅子の中に入って、座る人のの感触を楽しむ。という完全に変態小説。
椅子の中の恋がどのようなものか、じわりじわりと判ってくる展開。自分の中に変態性とシンクロする部分を見つけていく読書体験は奇妙な読み心地だ。
「押絵と旅する男」
“自然の法則を超越した、我々の世界とどこかで喰違っている処の、別の世界に住んでいたらしいのである。”
見世物があったころの浅草を舞台に、募る恋の果に押し絵の中に入っていく男を描く幻想的な短編小説。荒唐無稽な話なのに、どんどんありえると思ってしまう不思議な気持ち。
殺人も、グロテスクな情景もなし。猟奇すぎるのは苦手という人は、まずこの作品を。
「屋根裏の散歩者」
“その日から、彼の「屋根裏の散歩」が始まりました。夜となく昼となく、暇さえあれば、彼は泥棒猫の様に跫音を盗んで、棟木から梁の上を伝い歩くのです”。
探偵の明智小五郎と知り合って、犯罪に魅了された郷田三郎が殺人をする話。明智が犯罪談をしなかったら、こんなことにはならなかったのかもしれないのに……。
屋根裏を徘徊する男の狂気と哀しみの物語だ。
「怪人二十面相」
ご存知、少年探偵団シリーズ。
名探偵明智小五郎と対決するのは、“出没自在しゅつぼつじざい、神変しんぺんふかしぎの怪賊”の怪人二十面相。
“ただ、せめてものしあわせは、この盗賊は、宝石だとか、美術品だとか、美しくてめずらしくて、ひじょうに高価な品物をぬすむばかりで、現金にはあまり興味を持たないようですし、それに、人を傷つけたり殺したりする、ざんこくなふるまいは、一度もしたことがありません。血がきらいなのです。”
ロマノフ王家に伝わる宝石を盗む予告状が来るところから、物語は始まる。
二十面相シリーズの第一作目。少年時代にもどった気持ちでワクワクして読もう。