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「地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子」の原作を絶対読むべき理由

ドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』がめっちゃ楽しい。
ので原作『校閲ガール』を読んでみて驚いた。
小説『校閲ガール』は、第5回R-18文学賞大賞・読者賞『花宵道中』でデビューした宮木あや子の作品。
これは凄い。
ドラマ化に際して大胆なアレンジが加わえられている。が、原作のエピソードを活かして再構築している手際が見事なのだ。
小説版は小説の良さを、ドラマ版はドラマの良さを、存分に発揮し、「校閲ガール」という物語世界を作り上げている。

たとえば、主人公悦子の設定。
小説は、“新卒入社し校閲部に配属されて二年目”。
ドラマは、中途採用で新人という設定だ。
小説では、地の文などを使って校閲の仕事について解説ができる。
だがドラマでそれは難しい。誰かがセリフで解説したほうがスムーズだ。
そうすると、誰かが無知でなければならない。全員が校閲について知っている中で解説すると不自然だからだ。
なので、二年目の悦子は、ドラマ版ではド新人になったのだろう。
これで、校閲の仕事が何で、どのようなものかを、先輩の藤岩りおん(江口のりこ)が、悦子に教えることで、視聴者にも伝えられる。

もちろん新人にしたことで、あれこれドラマ版はさらなる工夫を凝らす。
ドラマに都合のよいように改竄するのではなく、全体を丁寧にアレンジしていく。(このあたりの工夫は、石原さとみ「校閲ガール」放送事故レベルとか安易に言うな、ドラマをナメるなを参照してください)。

他にも、小説の中のエピソードやセリフが、ていねいにアレンジされている。

小説で、悦子が景凡社を目指すのは、『Lassy』に載っていた「エディターズバッグ」に一目ぼれしたからだ。
入社動機を変えたドラマ版は、このエピソードを捨てるのではなく、ちゃんと別のエピソードにアレンジして取り込んだ。

「でもカフスがジャスティンのピアスだった。それはカフスじゃなくてピアスですよって教えてあげれば?それをきっかけに仲良くなれば?」
という小説の中のさりげないセリフは、ドラマでは、茸原部長が、悦子の才能を見抜くエピソードとして使われている。

小説では、第二話から出てくる受付嬢の今井や編集者の森尾。
小説は、登場人物がいきなり増えると読みにくい。
ので、まず第一話で、主人公と校閲にまつわる物語で読者を引き込み、じょじょにキャラクターを増やして、世界を豊かにしていく、という工夫だ。
ドラマは、役者が演じるので、その人がどのような姿をしているか、どういうタイプかはパッと判る。
だから、ドラマ版は、第一話から、主要登場人物をずらっと出した。

読む前は、ドラマのオリジナルキャラかなと思っていた是永是之(恋愛要素を追加するためのキャラかなーと思ったのです)は、小説にも出てくる。
是永是之は作家で、『犬っぽいっすね』というリニアモーター牛が出てくる小説を書いている。ドラマ版ではチラっとして出てきてなくて、どんなの!?と興味津々。原作には、その一部がしっかりと登場する。

『校閲ガール』、ドラマと小説を味わうことで、相乗効果で楽しさ倍々増だ。
部長は“エリンギに似て”ると小説で描写されるのだけど、たしかに岸谷五朗はちょっとエリンギっぽい。