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『3月のライオン』アニメ化とは、原作に忠実に、鮮烈に解釈して再構築すること

アニメ『3月のライオン』がスタートした。
これが、すごい。
必見。
アニメ第1話を観て、あわてて原作漫画を読んだ。
こういうとき、すぐに手に入れられて、すぐに読める電書は便利だ。

冒頭9分間、アニメ版は、主人公が喋らない。
日常の風景が、緻密な描写と高度な技巧で描かれる。
アニメーション制作は、「魔法少女まどか☆マギカ」「偽物語」等のシャフト。
監督は、新房昭之。
すごい技術を持ちながら、アバンギャルドな手法の辞さない監督だ。
だから、原作漫画の数コマをあえてアニメ化するときにこんなに長くしたのではないかと思ったからだ。

だが、原作漫画を読んで、さらに驚いた。
漫画でも主人公は喋らない。
「うそだ」という初のセリフは15ページ目だ。
漫画でも、すごいことをやっていた。
主人公が、目を覚まし、将棋会館へ向かい、対局し、勝利し、最初のセリフを言うまでを、ていねいに描く導入部だ。

静かな導入部から、一転、にぎやかな川本三姉妹のシーン。
漫画では1コマに4つも5つも吹き出しが詰め込まれ、かしましさを描いていた。
アニメでは、声優の声、星や花びら等の記号、「はわーい」「もっちり」「(※ウソ)」等の書き文字、キャラクターのデフォルメ、わんさか詰め込んで、がっちりとアニメ的手法でニギヤカ。
その虚構的表現を多様しニギヤカになっているなかで、主人公はほとんどデフォルメされない。
前半のていねいな日常を描いたシーンからの反転が効いて、さわがしさの中からさびしさが浮かび上がる。

アニメ化は、漫画原作を忠実に、だが、なぞるのではなく、しっかりと解釈して再構築している。
アニメと原作の両方を楽しめる幸せな作品になった。

アニメと原作を読み比べたくなる。
これから毎週毎週楽しみである(2話も良かった!)。

アニメ『3月のライオン』NHKテレビ。
土曜日午後5時05分放送。