2016.09.23
家族全員猟奇殺人鬼。江戸川乱歩賞受賞作『QJKJQ』がぶっ飛びすぎててむしろメフィスト賞
ヤバイヤバイヤバイヤバイ。佐藤究『QJKJQ』ヤバイ。家族全員猟奇殺人鬼っていうぶっとんだ設定の中で起こる殺人事件。乱歩賞じゃなくてメフィスト賞では?ってノリのミステリーだが、れっきとした第62回江戸川乱歩賞受賞作。
選考委員の有栖川有栖は「これは平成の『ドグラ・マグラ』である」と讃え、今野敏が「殺人そのものを突き詰めることで、人間を見つめている。脱帽だ」と感服する。湊かなえが「こういう作品があまり好きではないのです」と書きながら「一番高い評価を」つける。
問題作である。
自らが削り研ぎ磨いた鹿角ナイフで胸を一突きする女子高生。
バーベル用の軸で殴り殺す母。
鋼で作った牙を装着しネットで呼び寄せた女の喉を噛み切る兄。
ポンプを使って抜いた血をまた飲ませるという拷問的な殺し方の父。
悪趣味にもカッコいい猟奇家族を紹介する怒濤のスタートではじまって、マリリン・マンソン、義足、『地獄の季節』、シモニデスの記憶法、アレサ・フランクリン、ダムナティオ・メモリアエ等、中二全開の魅惑的な材料をこれでもかと詰め込み、ここまでたったの34ページ。
“素材がスタッグなら問題なし。もともと鹿の角は、獣を突き刺すようにできているんだから。胸の奥に詰まっていた何百匹ものミミズが、踊りながら飛び出したように見える。それから花火大会になる。赤い炎がフロントガラスに当たってびちゃびちゃと音を立てる。下へ垂れる。ハンドルの上に溜まっていく。”
ミステリ好きなら後半の展開は予想できるが、それをも超える乱暴な風呂敷のひろげっぷりは、さらにぶっとんでて中一か小六かもしくは全てを悟った老賢者かもしれぬって感じで突き進む。読むこちらは「あわわあわわあわわあわわ」言いながら休日の午後イッキに読むのが正しい読み方だろう。イッキ読み推奨の悪趣味猛スピード怪傑作。