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実は犬派かもしれない夏目漱石『漱石と猫の気ままな幸福論』

2016年で没後100周年になる夏目漱石。猫の視点から人間の生活を観察した『吾輩は猫である』で小説家デビューした。『こゝろ』と『道草』を発表する間には、愛犬・へクターの様子が描かれた『硝子戸の中』という随筆も書いている。

9月1日に発売された『漱石と猫の気ままな幸福論』(著・伊藤氏貴)は、漱石の名言の数々を解説した本。人間関係、仕事、恋愛・結婚、金、自己、人生、幸福の7つのジャンルに分けて紹介している。


真面目に考えよ 誠実に語れ 摯実に行え 汝の現今に播く種はやがて汝の収むべき未来となって現れるべし『日記』明治34年3月21日

世の中は根気の前に頭を下げることを知っていますが、火花の前には一瞬の記憶しか与えてくれません。『書簡』大正5年8月24日

「第2章 仕事」。今日頑張っても明日結果が出るとは限らない。出たとしても大した結果とはなりにくい。「真面目に生きるということ」の敷居の高さを感じさせる言葉がある。

真面目になれるほど、自信力の出ることはない。『虞美人草』

小説なのでこれは漱石が言ったわけではない。義理を捨てて財産欲しさに結婚相手を決めようとした人間に向けた台詞で「人一人真面目になると当人が助かるばかりじゃない。世の中が助かる。」と続く。

飼っていた3匹の猫に名前をつけず、「自分は犬の方が好きだ」と話していたという漱石。作者の伊藤は、名前や肩書に囚われない漱石の生き方を「猫のようにしなやか」だとしていた。しかし、性格は、猫よりも犬に似ていたのかもしれない。